『聖書と典礼』表紙絵解説 (『聖書と典礼』編集長 石井祥裕)

 2015年2月22日  四旬節第1主日 B年 (紫) 緑

2015年2月22日
わたしは、あなたたちと、そして後に続く子孫と、契約を立てる (創世記9・9)


鳩を放つノア
  モザイク
  ヴェネツィア サン・マルコ大聖堂 13世紀


 サン・マルコ大聖堂は、創世記を題材にした壮大なモザイクで知られる。天蓋モザイクには、天地創造が、壁画にはノアの洪水の物語(創世記6−8章)の幾つかの場面にクローズアップしたモザイクがあり、表紙はその一つである。洪水の終わりを確かめるために、ノアが鳩を放つところである(創世記8・8)。先に放った烏(8・6-7)も左側に描かれている。きょうの第一朗読箇所はノアの祝福と契約に関する箇所(創世記9・8−15)が読まれるが、その前提となった洪水の出来事を思い起こす意味で掲げたものである。
 ノアは、神の救いの計画の中で全人類を救おうとする神の意志と約束(契約)を受ける存在である。その後の神の民イスラエルの祖、またそれだけでなく新約の神の民、ひいては、救われるべき全人類を予告させる存在でもある。ノアの顔のうちに、やがて新しい契約の仲介者となったイエスの姿をも見てよいし、また、キリストを通して呼び集められた新約の神の民、現代という時代を生きる神の民の姿を思うこともできる。そして、神にいつまでも導かれていく未来の人類の姿を、希望とともに思い浮かべることもできよう。
 こう考えると、ここに描かれている鳩の意味するものも重要である。洪水の終わり(救い)の実現を確かめるために遣わされるものが、やがて新約においては神の救いの保証である聖霊の象徴になっていくのである。
 さて、きょうは四旬節最初の主日である。四旬節の主日ミサの聖書朗読は、第1朗読は、旧約聖書をとおして救いの歴史のいわばダイジェストを展開する形になっている。テーマだけ列挙するなら、B年では、第1主日がノアの契約、第2主日がアブラハムの献げ物、第3主日がモーセを通して与えられた律法、特に十戒、第4主日がエルサレム神殿とバビロン捕囚の出来事とペルシア王キュロスによる解放の布告、第5主日が新しい契約を約束するエレミヤの預言である。福音朗読と使徒書は共にキリストの過越の神秘に迫っていく形で主題的に選択されているが、第一朗読の旧約聖書は、救いの歴史の主要な出来事を歴史順にたどっていく形をとり、その中で福音朗読や使徒書の主題も考慮されているという、たいへん重層的な配分を示している。一つの主日の三つの朗読箇所を、さらに四旬節第1主日から第5主日までの展開を含めて黙想していくと、味わいはさらに深まっていく。前後の週のつながり、四旬節全体を通しての展開をみながら黙想することも、『聖書と典礼』を活用すれば、だれにでもできることであるので、そのことを心がけていきたいものである。
 ミサのことばの典礼で読まれる、聖書のことばは、これほどに、救いの歴史、神の救いの計画の歩みを幅広く示していく。ミサで聴くだけでは尽きない意味の深さを味わい、心にとどめる手だてとなるのが絵画である。四旬節の聖書朗読全体をとらえていくために役立てていきたい。

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