『聖書と典礼』表紙絵解説 (『聖書と典礼』編集長 石井祥裕)

 2015年12月25日   主の降誕(夜半のミサ) (白) 白

2015年12月25日
今日、あなたがたのために救い主がお生まれになった(福音朗読主題句 ルカ2・11より)

主の降誕      三宮一将(大分教区)
 

〔はじめに、大分教区所属、美術家、三宮一将さんが掲載依頼をご快諾くださったことにより、このような表紙をお届けすることができたことにまず感謝します。主の降誕(夜半のミサ)にふさわしいものとしていただきました。ここでは、鑑賞者としての感想を交えつつ、主の降誕夜半の福音朗読箇所を味わうことに努めたいと思います−筆者〕

  まずこの絵を見てだれもが目を引きつけられるのは、ひときわ明るくなっている幼子イエスが寝ている飼い葉桶とその前に寄り添うヨセフとマリアの姿であろう。幼子の姿の輪郭さえ判別しづらくなるほど、まばゆいばかりの光である。それでも、その光はあくまでも温かく、つつましくもある。牛小屋と見受けられるその建物はまさしく牧人たちの仕事の場所。そして、そのイエスの誕生を聞きつけて集まっている手前の羊飼いたち、そこには、また、天使の姿もある。光景全体は、立体的で空間の構造がしっかりと描写されている。この現実感のうちに、まさしく救い主がこの世に誕生したことが表現されているように思う。
 特に、羊たちが多く描かれていることが印象づけられる。いずれも、イエスから穏やかに発される光を受けている。羊飼いの描写もとても丁寧である。ルカの叙述を見ても、羊飼いたちの役割は重要である。野宿をして、夜通し羊の群れの番をしていた羊飼いたちに、「主の天使」が近づくのである(ルカ2・9)。右側の天使がそれで、左手が前に差し出されているところに、その後の言葉を告げているということが表現されていよう。翼で隠れそうになっているが、しっかりと描かれていることに注目したい。
 その言葉は、この絵で強調されているイエスからの光の意味を説き明かすもののようである。飼い葉桶の中に寝ている乳飲み子は、「民全体に与えられる大きな喜び」のしるしであり、「今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになった。この方こそ主メシアである」(2・11)ということが示されているのである。マリアとヨセフのほかに、このことが知らされたのは、羊飼いたちであるというところに、いろいろな意味が感じられる。貧しい素朴な民衆への喜びの告知、また、救い主が民を導く真の羊飼いとして生まれるというキリストに対する比喩的なあかし、その両面が考えられてくる。
 この天使の告知に、天の大軍が加わり、神を賛美して「いと高きところには栄光、神にあれ、地には平和、御心に適う人にあれ」(2・14)と歌われる。極めて立体空間的に描かれている中に登場する二位の天使、特に、幼子イエスを見守っている小さな天使の姿のうちに、この天における賛美の声を聞き取っていくことができる。
 闇の中に輝く光、人の世界にともにいる天使――この光景の中に天と地が交わって共に、神の子のこの世界への誕生という神の救いの実現が祝われている。それは、あくまでつつましく穏やかな静かで聖なる喜びである。この降誕の夜の独特な趣を三宮氏の絵画を通して、いつまでも味わっていたい。

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