多様な文化が共存する現代、西欧中心主義の思考から脱却し、キリスト・神中心の本来の宣教を行うための新たなパラダイムを構築するために。
エルネスト・D・ピレインス
淳心会司祭。1930年、ベルギー生まれ。哲学、神学を修めた後、1956年に司祭叙階。1957年、来日。1972年、オランダのネイメーヘン大学で博士号取得(神学・宣教学)。1973年以来、アジア、アメリカ、ヨーロッパ各地で教鞭をとる。数々の神学専門誌の編集委員を務める傍ら、自らも多くの論文を執筆。〔最新刊刊行当時〕
さまざまな文化が共存するこの世界で、わたしたちはイエスのメッセージをどのような形で告げ知らせるのでしょうか。 ともすればヨーロッパ中心、教会中心に傾きがちであったこれまでの宣教活動から、キリスト―神中心主義への転換を説きます。日本とアジアを拠点に宣教学を講義し、日本の諸宗教と文化の研究を重ねた著者による集大成。
序 言
第1章 生まれつつある新しい世界
宣教学上のパラダイム転換
西洋から非西洋へ
宗教的多様性の進行
諸宗教における宣教精神の高揚
非植民地化と独立
イメージの変化とそのゆくえ
世俗化の衝撃
第二バチカン公会議以後の公文書
第2章 宣教と福音化の古い見方
諸宗教への否定的態度
教会の数的拡大への理想
教会の移植
西洋文化の押しつけ
教会を中心とする見方
第3章 宣教は成し遂げられたのか
神は力を失ったのか
離散の教会
外国人宣教師への冷淡さ
現地関係者と外国人宣教師との関係
西洋と宣教師との間違った結びつき
諸文化、諸宗教への敬意の欠如
イエスのメッセージを熟考する必要性
第4章 宣教と福音化の新しい展望
――神の宣教と三位一体論的基礎から教会による宣教へ
神の宣教(Missio Dei)
三位一体論的基礎
神のイニシアチブへの参加
教会による宣教とは
内部宣教と外部宣教
公会議公文書に見られる新しい宣教モデル
教会論の進展における実践的な意味合い
宣教的教会論の抱える問題
第5章 対話である宣教と福音化――新しいパラダイム
宣教と福音化の真の意味
キリストのメッセージの基本的な核
メッセージと状況との出会い
福音化が必要な次元
宣教計画の立案
状況変化の認識
宗教とイデオロギー
伝統と現代性
状況の中での触媒的要因
諸宗教についての知識と理解
神の国の存在
対話による出会い
第6章 新しいパラダイムの宣教学的意味
回心との関連
回心と心の変革
回心の基本的特徴
回心のさまざまな可能性
宣教活動の動機づけについて
第7章 地方教会(The Local Church)
地方教会の特色
地方教会の現実
伝統的教会論における地方教会
地方教会の形成と発展
アジア圏における障害
教会成長神学
人間の生活全体に関わる福音化の役割
第8章 非キリスト教的文脈に伝えられた福音化とキリスト教信仰
人間の挑戦的な状況、あるいは人間の範疇――予備的考察
アジアの宗教と哲学の信仰内容と比較した
キリスト教信仰の特徴
第9章 聖書と宣教命令
総 論
宣教についての聖書的考察
第10章 初期教会教父と護教家の神学ー―諸宗教に対する教会の変遷
否定的見解
肯定的見解
その後の否定的な見解
例外的な人たち
第二バチカン公会議とその後の発展
第11章 文化的受肉 (inculturation)
用 語
文化と宗教
文化と宗教の相互関係
文化変容
文化的受肉
第12章 生ける信仰との出会い――諸宗教間の対話
不可避となった諸宗教間の対話
宗教の意味の明確化
諸宗教間対話の神学的考察
諸宗教間の対話に規則はあるのか
開かれた心で諸宗教間対話のテーブルに着く
諸宗教間の対話と証し
第13章 教会の奉仕職
教会に授けられているキリストの霊の賜物
キリストの奉仕職と私たちの奉仕職
叙階者たちの奉仕職
信徒の奉仕職
奉仕職における共同体の役割
共同体の宣教機能としての奉仕職
監訳者による解説
註
日本語による参考文献
文献案内
事項索引
人名索引