ザビエルの渡来からキリシタン時代を経て禁教・鎖国の時代、そして開国による再布教の時代の重要な各出来事を描き出す。加えて、その時代の象徴的な人物たちの評伝を取り上げ、日本とキリスト教の関係を多角的に見つめ、その歴史的な影響をわかりやすく示していく。
【編者】
太田 淑子(キリスト教史学会理事)〔最新刊刊行当時〕
【執筆者(執筆順)】
高木一雄、川村信三、村井早苗、小島幸枝、岸野 久、太田淑子、清水紘一、清水有子、五野井骼j、中島昭子、小川早百合、山崎渾子、片岡瑠美子、田代菊雄、太田
勝、牧野多完子
ザビエル渡来から「禁教・鎖国」にいたる「キリシタンの時代」と、19世紀半ば日本の開国でキリスト教宣教師の入国が可能となり、現在の日本カトリック教会にいたる再布教時代。この二つの時代に光をあて、ヨーロッパ社会で培われてきたキリスト教が、日本にどのように伝えられ、移植されていったかを探ります。また、歴史叙述と人物評伝を交え、人々がどのように受容していったかをたどっていきます。
1部 キリシタン時代
プロローグ
1章 ヴァリニァーノの時代
1 布教方針の明暗
ヴァリニァーノの布教政策/ヴァリニャーノの布教についての成果/イエズス会の長崎領有/織田信長の統一事業/信長と本願寺派(一向宗)/秀吉禁因の最有力説/布教の限界
2 宣教師たちの逡巡
一五九〇年代の日本キリスト教界/一五九二年の長崎協議会/九〇年代の宣教師たちの難問/「コンヒサン」を留保する「コンチリサン」/印刷本『こんちりさんのりやく』の意義
2章 天正遣欧使節団
1 立案、そして実現へ
イタリア人、アレッサンドロ・ヴァリニァーノ/旅の行程
2 ヨーロッパ人、日本人へのそれぞれの効果
財源確保とスポンサー探し/有力諸侯の名代とは/教皇との謁見記録/使節を迎えた諸侯/日本人向け効果/活版印刷機と「キリシタン版」/むすび
3章 諸修道会の来日と宣教
1 イエズス会独占布教からスペイン系修道会の来日へ
大航海時代と日本/国際情勢の転換/伴天連追放令の発令/フランシスコ会士の来日と波紋/徳川政権初期の諸修道会の動向
2 キリシタン禁制の開始
岡本大八事件から「大追放」へ/「大追放」後のキリシタン教界/慶長遣欧使節/イエズス会の活動の終焉
4章 キリシタン教会と音楽、演劇、絵画
1 西欧文化との出会い
フロイスによる日欧文化比較/キリシタン教会と日本人
2 音 楽
日本での教会音楽教育の始まり/教会音楽の発展と楽器製作/楽譜の印刷/歌オラショ
3 演 劇
日本文化を取り入れるくふう/ミステリヨ劇
4 絵 画
セミナリヨでの技術指導/画学舎での製作/画像の日本化
5おわりに
●人物素描
1 アンジロー――同宿の先駆け
2 フェルナンデス――来日した最初のイルマン
3 アルメイダ――福祉医療への献身
4 高山右近――「信行一如」を貫いた生涯
5 ガラシヤ細川玉子――散りぬべき時知りて
6 大田ジュリア――連行、流転、迫害のなかで
7 ペトロ岐部カスイ――転び申さず候
2部 再布教時代
プロローグ
5章 パリ外国宣教会の日本再布教計画
1 東洋への道
前史/宣教会の誕生/アユタヤから/一八世紀の危機/週一スーの献金/「出発したまえ、福音の先駆けとなる者よ」
2 日本再布教への試み
日本再上陸計画/琉球/フランスの祈り/琉球から日本へ/プロテスタントとの交流/おわりに
6章 キリスト教と明治維新
1 幕末の状況
パリ外国宣教会の来日/キリシタンの復活/浦上四番崩れ
2 維新政府のキリシタン政策
浦上キリシタン処分/外交団からの抗議/五島のキリシタン弾圧/岩倉使節団への影響と高札の撤去
7章 幕末維新期の浦上キリシタン教書――プティジャン版について
1 慶応三年の教書
「慶応三年の教会暦」/「慶応四年の教会暦」(その1)
2 明治元年のキリシタン教書
『聖教初学要理』/「慶応四年の教会暦」(その2)/『聖教初学要理』/『聖教日課』
8章 岩倉使節団とキリスト教
1 近代日本の課題――平和と共生へのあり方を求めて
開国の矛盾/第一の開国/第二の開国/東西文明の対決/平和と共生への模索
2 ナショナル・アイデンティティの再確認
岩倉氏切断の派遣/岩倉使節団が携帯した「耶蘇書類」/大久保・伊藤の一時帰国と留守政府/自由への懐疑/高札撤廃/岩倉使節団と文明開化/宗教と教育の衝突
●人物素描
8 岩永マキ――神と隣人への「ご大切」
9 ド・ロ――貧しき者たちとともに
10 ドミンゴ森松次郎――同胞を導き励ました五島の伝道士
11 阿部真造――復活教会への貢献と思想遍歴
12 山上卓樹――被差別部落の救いと解放を求めて
13 山口鹿三――近代日本を駆け抜けた文書伝道士
索 引
あとがき
参考文献