戦争の足音が迫る中、日本の中で信教の自由を守ろうとした先人たちの姿が生き生きと描かれる。礼拝と敬礼の問題、少数者への視線、メディアの役割と現実、良心的兵役の拒否、そして戦争――信教の自由が投げかけるさまざまな問いかけを見つめる。
鈴木範久(すずき・のりひさ)
立教大学名誉教授。1935年、愛知県生まれ。専攻は宗教学、日本宗教史。主な著書に『明治宗教思潮の研究――宗教学事始』(東京大学出版会)、『内村鑑三日録』(教文館)、『日本宗教史物語』(聖公会出版)、『聖書の日本語』『中勘助せんせ』(共に岩波書店)など。また編者・監修者として『内村鑑三全集』『新渡戸稲造論集』(共に岩波書店)、『近代日本キリスト教名著選集』(日本図書センター)など多数に関わる。〔最新刊刊行当時〕
日本で信教の自由はどう捉えられてきたのか。比較的寛容とされる日本社会で「異質」と見なされたキリスト教に照らして、近代以降の信教自由の歩みを概観する。さらにそこから自由の意味や少数者への視線、メディアの役割など、背後に潜む日本の文化的特質を探っていく。
はじめに
T 禁制時代●1868‐73
1章 フルベッキの「ブリーフ・スケッチ」
2章 森有礼の「宗教自由論」
3章 中村敬宇の「上書」
U 黙許時代●1873‐89
4章 葬儀の自由
5章 高梁教会事件
6章 公許の建白
V 公許時代●1889‐99
7章 大日本帝国憲法の発布
8章 内村鑑三不敬事件
9章 熊本英学校事件
10章 巣鴨監獄教誨師事件
11章 訓令一二号問題
12章 『青年之福音』事件
W 監督時代●1899‐1912
13章 矢部喜好の兵役拒否
14章 蘆花の「謀叛論」
15章 新潟の「楠公事件」
X 公認時代●1912‐38
16章 新渡戸稲造・松山事件
17章 上智大学靖国神社参拝拒否事件
18章 美濃ミッション事件
19章 奄美大島事件
20章 矢内原忠雄辞職事件
Y 統制時代●1938‐45
21章 灯台社事件
22章 ホーリネス教会事件
Z 自由時代●1945‐
23章 保障された「信教の自由」のなかで
おわりに
信教自由史略年譜