いま話題のマインドフルネスから日本の能表現・世阿弥までを、キリスト教の視点から取り上げて解説する、まったく新しい神学への招待。身近な出来事を通じて「神さまのぬくもり」に目を開き、第16回シノドスの「シノダリティ」の意味をはじめ、さまざまなキーワードを愉しみながら学べる神学入門。白浜満司教推薦。
阿部仲麻呂(Alexander Nakamaro ABE) 略歴 1968年、東京都渋谷区出身。1982年、受洗。1990年、サレジオ会入会。1997年、司祭叙階。神学博士(上智大学)、専攻は基礎神学、教義神学、ギリシア教父神学。サレジオ学院常務理事、東京カトリック神学院教授、福岡カトリック神学院・上智大学・桜美林大学・サレジオ修練院兼任講師。日本カトリック神学会理事、日本宣教学会常任理事、日本カトリック教育学会常任理事、未来哲学研究所企画委員、龍谷大学国際社会文化研究所客員研究員。著書は『信仰の美學』(春風社、2005年)、『使徒信条を詠む』(教友社、2014年、2021年完全版再版)など多数。共訳書は『カトリック教会のカテキズム要約[コンペンディウム]』(カトリック中央協議会、2010年)など多数。監修はジャック・デュプイ『キリスト教と諸宗教』(教友社、2018年、2021年再版)、岡田武夫『「悪」の研究』(フリープレス、2021年)。全国の諸教区の黙想指導、信仰講座、講演にも幅広く携わっている。 |
「本書は、人間の普段の生活の中で、わたしたちが〈あったかさ〉を自然に感じる事例を、十二の平易なテーマ(おもい・つながり・たべること・いのち・あったかさ・うつくしさ・やすらぎ・つつみこむこと・さがしもとめること・さけび・よろこび・ふるさと)に分類して拾い上げながら、目には見えなくても、その奥にあって、それを支えている本源的な〈神さまのぬくもり〉に、読者のこころの目を開かせようとしています。
神学博士である著者は、カトリック司祭を養成する機関である神学院や大学などで長年教鞭を執り、その深遠な神学的思索を背景にしつつも、わかりやすい表現や身近な出来事の紹介を通して、わたしたちが〈あったかさ〉を取り戻すために見失ってはならないものを再確認させようとしています」(司教 アレキシオ白浜満「推薦のことば」より)。
だれもが体験する日常の一コマを例に出しながら、「神の愛」「すくい」「あがない」「ゆるし」などの意味を学ぶための神学の入門書として、組織神学や教義神学をはじめ、「護教論」と基礎神学の違いなど、神学全般を理解しやすい言葉で説明した書籍です。
加えて、現代のマインドフルネスやスローライフから能表現・世阿弥の所作の意味までをキリスト教の視点から明快に分析しつつ、諸宗教の神学やフランシスコ教皇の業績、地球環境の危機を訴えた回勅「ラウダート・シ」をめぐってのバチカン内部の動向についても明らかにします。
また、2023年10月と2024年秋の2会期に分けて行われる世界代表司教会議(シノドス)第16回通常総会についての解説では、教会共同体全体で識別の道を歩む画期的な意義や「シノダリティ」が意味する「協道性」のテーマについてさまざまな角度から考察しており、今後のローマ・カトリック教会の方向性を示唆する内容ともなっています。
本書に触れる人は、「これだけ分かりやすく、温かい、羽のように軽やかに舞う神学書は世界にも例を見ないのではないでしょうか。子どものように御父に甘えながら楽しんで神学ができる、老いも若きも、思い立ったが吉日、今日から神学を学んでみようという気持ちにさせてくれる」(上智大学神学部教授
原敬子「解説」より)という言葉の通り、神学の基礎を愉しみながら自然に学んでいくことになるでしょう。
■推薦のことば 司教 アレキシオ 白浜 満
■まえがき
一 おもい 御父のいつくしみ、創造――「神論・創造論」
1 はじめに
2 「三歳の男の子」のエピソード
3 「灰色の人生」から「薔薇色の人生」へ
4 ヨハネ福音書のポイント
5 キリスト教のはじまり
6 みなさんの学生生活との関連性
7 彼が「キリスト者」になる決意をした経緯
8 深い経験に支えられた、かぎりないよろこびの感覚
9 新たなるはじめに
10 すべてのはじまり
11 神さまのおもい
12 つながりつづけるおもい
13 食卓を囲むひととき
14 イエスと私たち
15 イエスと相手との具体的なふれあい
16 はらわたがちぎれるおもいに駆られるイエス
17 イスラエル民族の内臓感覚重視の思考法
18 古代の教父たちの神学思想を受け継ぐ教会共同体
19 ケノーシス(徹底的自己無化、へりくだり)によるペルソナ性(人としての尊厳性=人格性)
20 聖書の「創造」理解
二 つながり 啓示・伝達・信仰――「基礎神学」
21 キリスト者の心がまえ――信仰の立場で物事を眺める
22 キリスト者の生き方――愛を土台にして歩む
23 信仰生活を深めるための手がかり――「秘跡」と「祈り」と「ていねいさ」
24 「基礎神学」について
25 信仰生活の三つのタイプ(神学の三つのタイプ)
26 徹する姿勢
27 傾 き
28 派閥争い?
29 橋渡し
三 たべること 御子イエス=キリストの言葉とわざ――「キリスト論」
30 道・まこと・いのち???力強いイエス=キリストの呼びかけ
31 武術・禅瞑想とキリストの道
32 人生の極意???キリストとともに歩む
33 二〇二二年度の意義――二〇二三年十月の第十六回通常シノドス(世界代表司教会議)に向けて
34 どうしても変われないエゴイストたち
35 ゆっくりと真実を見つめて生きる??スローライフ
36 食事??おもい・つながり・感謝
37 「たべもの」になること
38 「ささげもの」としての生き方
39 いつくしみ深い言葉とわざ
40 イエスの賢さ
41 ともに生きるイエス
42 「自己中心的な生き方」から「他者を支える生き方」へ
43 放蕩息子を抱きしめる親の愛情深さ――信仰の指導者の資質
44 まっすぐに生きる
45 自分の心をどのように整えるか――心のもちよう
46 「信仰のイエス=キリスト」・「史的イエス」・「史的キリスト」
47 「聖骸布」が物語ること
48 選び――キリストこそが私たちを呼び出してくださる
四 いのち 聖霊における万物の交流――「聖霊論」
49 後から、わかる――風、思い巡らし、実り
50 生活習慣上の感触――私たちのいのちの根源
51 そばにいる強力な味方――教会共同体の創設
52 ペルソナ――相手のために響ける自分
53 啓示と信仰――二つの道が循環する信仰生活
54 「私たち」という極意――いっしょに生きれば自分らしくなれる
55 聖霊の働きの見究め――聖イグナチオ・デ・ロヨラによる『霊操』
56 「相手」としての聖霊
57 風と息??いのちのつながり
58 神さまのいつくしみのはたらき??聖霊
59 ありえないところから神さまのいつくしみが……
60 わかること――聖霊の後押し
61 聖書と生活、うずまくなかでの再発見
62 食物連鎖
五 あったかさ よろこばしい知らせ――「福音宣教論」
63 相手をおもうイエス
64 イエスの一貫した愛の実力
65 ほどよいぬくもり
66 神さまのぬくもり
67 いつでも会える
68 相手をおもいやること
69 相手のもとへ出向くこと
70 おおらかに、すなおに、信頼して進もう!
71 よろこばしい知らせ
72 諸宗教の神学の先駆者ジャック・デュプイ師をめぐって――『キリスト教と諸宗教』の邦訳刊行を記念して
六 うつくしさ 生き方、個性――「人間論・マリア論・美学」
73 あなたにとって美しさとは?
74 それぞれのよさ
75 いのちの舞台
76 人間の姿としての「恵まれたマリア」
77 「信仰の美学=日本における神学」
78 枯れることによる美しさ
79 「逆説的な美」について――世阿弥とイエス
七 やすらぎ やさしさ、平和、愛の重み、ゆるし、奉仕、新生、あがない――「教会論・典礼神学」
80 『CREDO』という本に見る「放蕩息子を迎える父親のような神さま」
81 拙著『使徒信条を詠む』について
82 「やさしさ」(親切、思いやり深さ)の神学を目指して
83 「やさしさ」を見直し、「安心感」という実りを識別すること
84 「信仰=希望=愛」
85 回心への歩み
86 平和(シャローム)
87 主の昇天
88 「愛の重み」としての神さまの栄光
89 教会は建物ではない
90 混ざった教会共同体(エクレシア・ミクスタ)
91 やすらぎ
92 ゆるしと奉仕による新生
93 「あがない」の秘義
94 ゆるしの秘跡の味わい??親子関係および兄弟姉妹関係から家族関係の深まりへ
95 教会共同体の新生に向けて――教皇フランシスコから学ぶ
96 児童保護に向けた教会共同体づくり――三つのゆがみを生み出す未熟さとの闘い
97 「信教の自由」の意味と可能性
八 つつみこむこと 対話、文化受肉、救い――「救済論」
98 つつみこむこと??「神さまの似姿」として
99 ありのままに
100 新しく生まれなおすこと
101 せまさ
102 対 話
103 相手の立場に立って
104 救いT――あらゆる面で、何一つ欠けることのない円満な状態
105 救いU――キリストと出会うことで愛情深くなること
106 相手が「救い」をもたらす(私も他者の相手となれるかどうか)
107 本気でキリストに魅せられた人の強さ
108 救いV――主においてよろこぶこと
109 新たなる瞑想の方法に関して――ティム・ステッドから柳田敏洋へ
九 さがしもとめること 神さまの特徴、友となること――「実践神学」
110 なりふりかまわず探し求めること
111 あなたは宝もの
112 神さまの特徴
113 友となること
114 友よ!
115 細やかな配慮
116 主の洗礼の出来事
117 神さまのいつくしみと裁き――「神さまのかたち(似像)」としての人間性を生きる女性と男性
118 キリスト者の生活
十 さけび(十字架、罪、祈り、死――「啓示論・三位一体論・神義論」)
119 「水をください」というさけび
120 神さまと人間との愛のコミュニケーション??『啓示憲章』発布五七周年に
121 神さまの愛情のはたらきの深まり
122 霊的解釈(聖霊に導かれて解釈すること)の大切さ
123 愛情が憎しみに反転するとき??矛盾をかかえこむ私の心
124 「さけび」としての十字架、罪、祈り、死
125 十字架上の死の意味――新しい契約、従順、多くの実
126 私たちの苦難
127 いまの私たちにとっての「徳」の可能性
128 悪について
129 苦しみについて
130 神義論――「神さまが沈黙している」と思い込んでいる人間の痛みをおもう
十一 よろこび 聖性、慈愛――「霊性神学・恩恵論」
131 神さまとの親しさとしての「聖性」
132 よろこびに満たされて生きること
133 神さまとの疎遠な状態??悪と原罪と罪
134 天使の役割
135 聖霊のよろこびに満たされて生きること?聖ジョン・ヘンリー・ニューマン
136 おだやかでほがらかな慈愛――聖フランソア・ド・サル、聖ジョヴァンニ・ボスコ
137 日常生活の味わい――菩薩道・却来華・喫茶・高悟帰俗のさりげなさ
138 「へりくだり」という極意
139 無心論
十二 ふるさと(回復、終末、復活――「復活論・終末論」)
140 「いのちの回復」としての終末の食事に向けて生きる
141 神さまのいつくしみの満ちるところ
142 「復活」の六つの意味
143 相手が生きつづけていることの尊さ――復活の日常性
144 神さまに感謝する教会共同体
145 もどってくるイエス=キリスト
146 連帯について
147 じゅうぶんに相手を大切にしていないという罪深さをこえて
■解説――というより、讃詞 上智大学神学部教授・援助修道会会員 原敬子
■あとがき――キリストとともに高貴なる者としての責務を生きる
初出出典