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聖書と典礼

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『聖書と典礼』表紙絵解説 (『聖書と典礼』編集長 石井祥裕)
2023年11月26日 王であるキリスト A年 (白)  
人の子はその栄光の座に着く。そして、すべての国の民をより分ける
 (福音朗読主題句 マタイ25・31-32より)

最後の審判(黙示録20・11-15参照)
バンベルク黙示録挿絵
ドイツ バンベルク国立図書館 11世紀

 A年の年間第32主日、第33主日とマタイ福音書の25章がしっかりと読まれてきた(32主日=十人のおとめのたとえ、33主日=タラントンのたとえ)。そして王であるキリストの主日(祭日)は、すぐそれに続くマタイ福音書25章31-46節が福音朗読箇所となっている。それほどに25章は、重視されている。きょうの朗読の冒頭は31節「人の子は、栄光に輝いて天使たちを皆従えて来るとき、その栄光の座に着く」とある。話は、それからすべての国の民を分け、「わたしの父に祝福された人たち」(34節)と、「呪われた者ども」(41節)とに分けられるが、このことが、羊飼いがが羊と山羊を分ける様子(32節参照)に譬えられている話である。
 この最後の審判については、マタイ福音書自体にも人の子が来るときの様子として、「そのとき、地上のすべての民族は悲しみ、人の子が大いなる力と栄光を帯びて天の雲に乗って来るのを見る。人の子は、大きなラッパの根を合図にその天使たちを遣わす」(マタイ24・30-31)と語られていた。
 最後の審判の到来を告げるラッパという表象は、黙示録で詳しく言及される。黙示録8章では第一から第四の天使が、9章では第五~第六の天使がラッパを吹く。これらは最後の審判の前触れとなる出来事の合図になっている。そして、11章では、第七の天使がラッパを吹くと「この世の国は、我らの主と、そのメシアのものとなった。主は世々限りなく統治される」(15節)と主の到来が告げられる。そこで最後の戦いが起こるというのが黙示録の展開であるが、その果てに行われる最後の審判が黙示録20章11-15節で述べられる。そこでは死者たちが「それぞれ自分の行いに応じて裁かれた」(黙示録20・12)。こうした新約聖書における最後の審判の場面を描く黙示録の部分の挿絵として作られたのが今回の表紙絵の作品である。
 イエスは既に天に昇り、玉座に着いている。上の段の両側と、下段の民衆の側の両側、合計四位の天使がラッパを吹き鳴らしている。最後の審判の開始の合図である。イエスの両側には、最上段には天使たちの列、二段目には使徒たちの列がある。すでに主のそばに招かれた人々、そして今、来臨の主、裁き手としての主を迎えている存在である。イエスの足もとの下に二人の天使が下にいる群衆に向かって巻物を開いている。その巻物に書かれてある文字は、黙示録の箇所というより、上述のマタイ25章31-46節を思い浮かべさせる。二位の天使のうち(向かって)左側の天使の巻物は、「わたしの父に祝福された人たち」と書かれており、右側の天使の巻物には「呪われた者ども」そして「永遠の火に入る人たち」(マタイ25・41参照)を意味する文字が読み取れる。その天使たちの前に大勢描かれている民衆のさらに下には、眠りについて死者が起こされて裁きを受けるようとしている図が描かれている。黙示録の「海は、その中にいた死者を外に出した。死と陰府(よみ)も、その中にいた死者を外に出し、彼らはそれぞれ自分の行いに応じて裁かれた」(黙示録20・13)に対応する。右下には鎖に縛られた人たちが描かれているが、それはマタイの述べる「この者どもは永遠の罰を受け」(マタイ25・46)にあたるだろう。新約聖書の各書が描く最後の審判の様子をまとめつつ形象化されていくのがわかる挿絵である。この図像表現がロマネスクやゴシックの聖堂建築で、しばしば入口の上を飾るレリーフで表現され、人々に最後の審判への畏れ、終末への備えを意識化させるメッセージ図像となっていく。
 こうした図から、罪と悪に落ちた者への罰のほうの印象を強く受けがちであるが、最後には、キリストが神のみ旨を適う人を祝福し、「正しい人は永遠の命にあずかる」(マタイ25・46)という約束を実現しに来られるという、救いの完成への希望の図であることを忘れてはならない。「主よ、あなたの死を告げ知らせ、復活をほめたたえます。再び来られるときまで」(ミサの記念唱の一つ)、「わたしたちの罪をおゆるしください。わたしたちも人をゆるします。わたしたちを誘惑に陥らせず、悪よりお救いください」(主の祈り)、「国と力と栄光は、永遠にあなたのもの」(主の祈りの副文への応唱)と祈り続ける、神の民の心を表現する図ということもできる。

 きょうの福音箇所をさらに深めるために

和田幹男 著『主日の聖書を読む(A年)●典礼暦に沿って』「王であるキリスト」

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