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聖書と典礼

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『聖書と典礼』表紙絵解説 (『聖書と典礼』編集長 石井祥裕)
2024年1月14日 年間第2主日 B年 (緑)  
あなたはヨハネの子シモンであるが、ケファと呼ぶことにする(ヨハネ1・42より)

使徒ペトロ
イコン(部分)
ロシア ノブゴロド歴史建築博物館 12世紀

 ロシア、ノブゴロド派イコンの例である。聖ペトロを描く部分をクローズアップしているが、もう一人のロシアの聖人とともにキリストを仰ぎ祈っているところを描くイコンである。実は、このイコンは、表が「しるしの聖母」は呼ばれるマリアのイコン(現存せず)で、その裏面に描かれたものである。
 大きく映るペトロは、どこか悲しげでもある。キリストにひたすら切実な願いをさし向けているのだろう。嘆願のペトロと言ってもよいかもしれない。
 ペトロが表紙絵に掲げられているのは、もちろん、きょうの福音朗読箇所ヨハネ1章35-42節にちなんでいる。年間第2主日は、どの年もヨハネ福音書が読まれるという特徴がある。今年の主日の聖書朗読B年の特徴をなすマルコ福音書からの朗読は、来週の年間第3主日から始まる。これは、次のような朗読配分の原則によっている。「年間第2主日の福音は、伝統的なカナの婚宴の箇所と、同じヨハネ福音書の他の二つの箇所によって、公現の祭日に祝った主の顕現との関連が保たれている。第3主日からは、三つの共観福音書の準継続朗読が始まる。この朗読は、主の生涯と宣教を展開しながら、各福音書に固有な教えを示すよう編成されている」(『朗読聖書の緒言』105項)。
 カナの婚宴の箇所(ヨハネ2・1-11)はC年の年間第2主日に、そしてA年には洗礼者ヨハネによる「神の小羊」としてのあかし(ヨハネ1・29-34)、B年には、それにすぐ続く、きょうの最初の弟子たちの召命の箇所が読まれる。来週のマルコ1章14-20節でも、シモンとアンデレ、そしてゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネの4人が出てくるので、今週と来週は一部、重なるが、それぞれが召命というものの別な面を示していて興味深い。「公現の祭日に祝った主の顕現との関連」(上述)として見ると、きょうの箇所では、イエスが「神の小羊」であるというあかしに加えて、「メシア」である、というアンデレのあかしが鍵となる。「ケファ」(岩)としてのペトロの召命もこれと不可分に結びついている。
 この対応関係をより詳しく教えてくれるのが、マタイ福音書16章15-18節である。そこで、イエスは弟子たちに向かって「あなたがたはわたしを何者だと言うのか」(15節)と問いかけると、シモン・ペトロが「あなたはメシア、生ける神の子です」(16節)と答える。すると、イエスは「あなたは幸いだ。……あなたはペトロ。わたしはこの岩の上にわたしの教会を建てる。……」(17-18節)と答える。イエスに対する「メシア」(=「油を注がれた者」=救い主)という信仰宣言と、ペトロの「岩」、すなわち教会の礎としての召命が見事に対応している。信仰宣言とともに、教会は生まれるのである。
 もう一つ、注目すべきは、きょうのヨハネ福音書の朗読箇所(1・35-42)で、語られる前半の経緯である。最初、洗礼者ヨハネの二人の弟子が言及される。これは、アンデレとゼデダイの子ヨハネと考えられている。この二人は、洗礼者ヨハネの「見よ、神の小羊だ」(36節)というあかしを聞いて、イエスに従う者となる(37節参照)。そして、イエスに対する彼らの「どこに泊まっておられるのですか」(38節)という質問にイエスは「来なさい。そうすれば分かる」(39節)と答え、二人はイエスについて行き、イエスのもとに泊まる(40節)。「来なさい」という呼びかけに従い、イエスと一緒にいる者となる、というこの経過のうちに、弟子となること、弟子であることが言い尽くされているとも言えるのである。
 こうして、きょうのヨハネ福音の箇所においで、イエスに対するあかしや信仰告白はペトロだけでなく、洗礼者ヨハネ、アンデレが先駆となっている。信仰宣言は、イエスを巡る人々を通じて、神ご自身があかししていることなのである。それに答える弟子たちは決して単独ではなく、最初から兄弟として相互の紹介と告知を通じて行われている。後には、マグダラのマリアも関係する(ヨハネ20・1-2参照)。福音宣教は、元来、兄弟姉妹的な協力・協働の事柄であることが印象づけられる。

 きょうの福音箇所をさらに深めるために

和田幹男 著『主日の聖書を読む(B年)●典礼暦に沿って』年間第2主日

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