全世界の仲間たちといっしょに復活の主日を祝うことを心から喜びましょう。今、世界は異なる歴史を経てきた文明の衝突、雇用や経済的な格差の拡大といったすぐには解決できない問題をかかえて苦しんでいます。それでも私たちは主の復活の喜びの中に入っていきます。 まず問題を解決してすっきりしてから喜ぶのではなく、いまだ道は遠いのに、皆で一つのところに集まります。明るい未来を感じている人、悲しみの癒えていない人、自分に与えられた平和を感謝しようとする人、不安の中で心ふるわせている人。でも、それでも私たちは自分の変えられない現状の中で今日、一つの場に集まるのです。 復活の主に最初に出会った人々も同様だったのではないでしょうか。イエスを十字架につけた勢力が三日ですっかり追い払われたわけではないでしょう。自分だけはイエスに忠実に従う者だと誇っていた弟子の心が全面的に変わったわけでもなかったでしょう。でもそんな、そのままの人間たちのまん中に主はやって来てくださったのです。 ある九十歳の病気のご婦人からうかがった話を思い出します。その方は和室でベッドに休んでいらっしゃいました。自立した一人暮らしでしたが、もう最後の時が近いということで、娘さんが中学生の息子と高校生の娘を連れて一緒に暮らすようになりました。夕食のあとその三人が彼女のベッドのわきで川の字になって寝ていたそうです。そこにはただ肩を寄せ合う平和がありました。その方はその光景をしみじみ見つめて思ったそうです。 「私はいつも誰にも負けまいと我が子を自分の理想に向かって変えようとしてきました。でも、私はこの娘に負けました。私は自分の子どもたちに、一度もこんなに深い平安を与えたことはなかったからです。」 その方は若い時にご主人に先立たれ、どんなことにも負けないで二人のお子さんを成人させたしっかり者でした。わが娘に負けたことを最高の幸せだと言って、満面の笑顔を置きみやげに神様のもとに行かれました。 喜びであれ、不安であれ、それが最後のページではないことを主の復活は今年も私たちに告げ知らせてくれます。だから主の復活は喜びの福音です。(『聖書と典礼』復活の主日 2015年4月5日より) 【訃報】パウロ星野正道神父(2023年9月20日) |