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研究活動

オリエンス・セミナー

=次回開催予定=
第112回

テーマ:諸宗教の神学の創始者ジャック・デュプイによる「実践的なアガぺ」について

講師:阿部仲麻呂神父(日本カトリック神学院教授)
日時:2025年10月23日(木)18:30〜20:30
場所:オリエンス宗教研究所2F 図書室

 
イエズス会司祭のジャック・デュプイ師(1923−2004年)はベルギー出身の神学者です。彼は1948年から84年にかけて36年間にわたりインドで宣教師として活躍し、イエズス会神学院の教義神学教授を務めたばかりでなく、他にもヒンドゥー教や仏教の根底に潜む宗教性の研究やキリスト教と諸宗教の比較研究にも力を尽くしました。その後、ローマに招かれてグレゴリアン大学で教義神学や基礎神学の教鞭を執るかたわら、権威ある神学分野の学術誌『グレゴリアーヌム』誌の編集長も務めました。彼は「諸宗教の神学」の大家として著名ですが、もともとは教義神学(救済論、キリスト論)や教父思想の専門家でした。彼が究めた諸宗教の神学の最終的な結論は「アガペ(神の慈愛)によって判定することの重要性」でした。謙虚に真実を求めて修練を積み重ねる宗教者や団体は誠実な生き方において、おのずからアガペを実現します。デュプイ師が依拠する古代教父の発想では、私たちが人間であることそのものにおいてすでに神の子としての資格を備えつつ神の似姿へと成熟する可能性を秘めているので、人間は神の慈愛を実現できます。実践的な愛がキリストを現存させます。
 
参考図書:『キリストとともに――世界が広がる神学入門』 阿部仲麻呂 著 他

セミナーのお申し込み・問い合わせ 
(どなたでもご参加いただけますので当日までにお申込みをお願いいたします。協賛金としてセミナー会場にて一口500円を申し受けます。なお、セミナー終了後に自由参加の会費3,000円〜4,000円程度の懇親会を予定しております)



<オリエンス・セミナー2025年度テーマ>
「対話」――現代世界と宗教

 現代社会は、グローバル化とデジタル化の進展によって、多様な文化や価値観が交差する場となっている。一方で、経済的格差の拡大や環境問題の深刻化、AI技術の発展などが新たな対立や断絶を生み出している。こうした状況において、宗教はどのような役割を果たし、社会の相互理解と連帯を促進できるのか。本セミナーでは、「対話」を軸に、宗教が現代社会とどのように向き合うべきかを探求する。
 経済的・社会的格差の拡大に対して、宗教は慈善活動や社会正義の推進を通じて、人々の連帯を支える重要な役割を果たし得る。倫理的価値観の再考を含め、宗教がどのように社会の安定と調和に寄与できるのかを考察し、宗教対話の具体的な実践方法を模索することは、持続可能な平和構築において不可欠な要素である。
 さらに、比較宗教の視点から、宗教の多様性を尊重しつつ、異なる宗教間で共有可能な倫理的・精神的基盤を見出すことは、対話を深化させる上で重要な課題となる。加えて、気候変動や環境破壊が深刻化する現代において、宗教が持つ「自然との対話と調和」の思想を再評価し、環境倫理への貢献の可能性を探ることも求められる。
 また、AI技術の発展が人間の価値観や倫理観に与える影響についても考察する。AIと宗教の関係や、テクノロジーと人間性の問題など、宗教が未来の社会においてどのような意義を持ち得るのかを探ることが必要である。
 こうした時代の変化に対応しつつ、カトリック教会が第二バチカン公会議以降、「対話」を重視する姿勢へと転じた背景をふまえて考察したい。

=開催終了=
第111回

テーマ:可能性としての新トマス・新スコラ学――近現代日本での回勅等関係の形成史いくつかと本質への動き(テーマ修正)

講師:黒住 真先生(東京大学名誉教授)
日時:2025年9月25日(木)18:30〜20:30
場所:オリエンス宗教研究所2F 図書室
(下記地図)
 
キリスト教の教理またカトリックの回勅が近現代でどのような位置や影響をもったか。
あまり知られていないが重要な思想家を辿り、その日本での仕組みを辿る。まず教理・回勅自体の内容を見出す岩下壮一の考えの展開をみてその天皇との関係も知る。また近現代の産業の間違いをとらえ農業をもった交流・形成の押田成人や関係論者を知る。更に回勅や平和を知った戦前の上田辰之助、戦後の宇沢弘文の経済論を見る。最後に、現在活動中のテリー・イーグルトンの文化論が、苦難や間違いを捉えながらの回勅への応対にもなる。が、そこにあるのは何なのか、アガペ(愛)のことではないか。詳細ではなく要点をとらえながら現在への方向を見出したい。


参考図書
 
月刊『福音宣教』2025年6月号、8・9月号、10月号では、加藤和哉(聖心女子大学教授)著「岩下壮一の青春」と題した好評連載を掲載しております。
 ――大正時代から戦前にかけて日本のカトリック教会の司祭として、また哲学者、教育者としてだけでなく、さらに出版や福祉などの社会事業も含む多方面の活動に従事した岩下壮一(一八八九‐一九四〇)は、残念なことに現在ではカトリック教会の中でも十分に知られた存在ではない。一〇年以上前に、ある全国紙が彼を取り上げたときに「『忘れられた思想家』と呼ばれたことすら忘れられている」と書いたことがあるが、今はさらに忘却の彼方にあるといってよいだろう。筆者も中世哲学研究を志した頃、岩下が帝大哲学科の秀才として将来を嘱望され、中世哲学講座を開設することが期待されたのに、司祭になってしまったために実現しなかったことを知った。結果として、今に至るまで東京大学には中世哲学の講座が置かれていないことを恨みに思ったものの、それ以上の関心は持たなかった。ところが近年、様々な縁と不思議な出会いに導かれるまま、この忘れられた人物の事績に身近にふれることとなった。今は、岩下壮一は、明治以降の日本において最も卓越したキリスト者の一人であり、五〇年の短い生涯ながら、深い学識と幅広い教養を備えた傑出した知識人であるとともに、全精力を注いで若者や病者のために献身した優れた実践家でもあったことを確信している。(月刊『福音宣教』2025年6月号「岩下壮一の青春(1)」より)


 ※電子版note 月刊『福音宣教』の各掲載記事は、単体の記事(100円)としてもお求めになれます。

◆岩下壮一の青春(1) 岩下壮一を創ったもの――父・山本信次郎・ケーベル (月刊『福音宣教』2025年6月号掲載)
◆岩下壮一の青春(2) 導かれるままに (月刊『福音宣教』2025年8・9月号掲載)
◆岩下壮一の青春(3) 20世紀のフランシスコ・ザビエル (月刊『福音宣教』2025年10月号掲載)

=開催終了=
第110回

テーマ:中世ヨーロッパの身体――笑いとダンスの観点から

講師:後藤里菜先生(青山学院大学 文学部史学科准教授)
日時:2025年7月18日(金)18:30〜20:30
場所:オリエンス宗教研究所2F 図書室

 
笑いもダンスも、中世ヨーロッパでは、それが人間の心身を浮き立たせるものであるがゆえに、悪魔や罪と結びつけられ、教会から否定的な文言が繰り返し出されていた。中世末には死の舞踏という表象が知られている。しかし、戦勝などの祝い事の儀礼における踊りは古代から行われ続けており、宮廷という空間が育つにつれて、ダンスや人を笑わせる気の利いた素養は、貴族・騎士の嗜みとなった。むろん神を讃えるために天使や聖人たちが身を投じる歌やダンスは、良いもの、必要なものとして語られていた。
 本発表では、中世社会で多様な価値観を持ち併存した笑いとダンスに焦点を当てることによって、その双方と関わる「身体」について問い直し、対話する機会としたい。
 参考図書:『沈黙の中世史――感情史から見るヨーロッパ』 後藤里菜著(ちくま新書)

=開催終了=

第109回
テーマ:宗教間対話の必要性と可能性――キリスト教と諸宗教に対する第二バチカン公会議の宣言、60周年
講師:カブンディ・オノレ(カトリック淳心会司祭、オリエンス宗教研究所所長)
日時:6月27日(金)18:30〜20:30
場所:オリエンス宗教研究所2F 図書室

 現代のカトリック教会の方向性を定めた、第二バチカン公会議(1962‐65年)での「キリスト教以外の諸宗教に対する教会の態度についての宣言」が発表されてから、今年で60年を迎えます。
 これを記念し、他宗教に対するキリスト教(カトリック教会)の態度、宗教間対話の必要性と可能性について分析し、キリスト者の信じる神の救いは宗教の境界を越えるのかについて、宗教多元主義との関係、神の計画の中での諸宗教の位置づけを検討しつつ、多くの宗教が並び立つアフリカでの経験から宗教間対話への新たな取り組みを提示しました。

 参考図書:『境界を越える神の救いの計画 ●宗教間対話の新たな地平へ』 カブンディ・オノレ著

=開催終了=
第108回
テーマ:「対話時代」に向けて――トマス・アクィナスから学ぶ
講師:桑原直己先生(筑波大学名誉教授、日本カトリック神学院講師)

日時:2025年5月16日(金)18:30〜20:30
場所:オリエンス宗教研究所2F図書室


=開催中(受付終了)=

『オリエンス・セミナー』2025年 聖年特別企画
テーマ 聖年を歩み、生きるために―ファシリテーションの方法を学ぶ―
主催:オリエンス宗教研究所  協力:カトリック東京大司教区
場所:カトリック松原教会 聖堂  〒156-0043 東京都世田谷区松原2-28-5
(京王線・井の頭線「明大前駅」より徒歩5分)
日時・講師・会費:下記日程参照/各回14時〜17時・会場参加のみ全7回(8月休講)・6,600円(税込)
5/17(土)、6/21(土)、7/19(土)、9/6(土)、10/4(土)、11/15(土)、12/6(土

テーマ(趣旨)
聖年を希望をもって歩むにために、カトリック東京大司教区の協力のもと、第16回通常シノドスで行われた「霊における会話」の進め方を中心に、その要となるファシリテーションの実践方法を学び、身につけるプログラムを開催いたします。

>>>詳細はこちらからご参照ください。<<<


■2002年から始まったオリエンス・セミナー(共同研究会)は、当初掲げられた研究テーマ「信仰の目をもってする近代日本精神史の諸相の検討」以来、今日まで、主として日本におけるキリスト教のありかたをめぐって種々の課題を検討してきました。

<オリエンス・セミナー2018〜2020年度のテーマ>
「現代社会における伝統の新たな役割」
 
人間は歴史を積み重ねていく中、より幸せになるために、科学技術を発展させてきた。しかしながら、進行するIT(情報技術)の発展は、私たちに幸福をもらすばかりではなく、多くの人々がそれに支配されているという側面も出現させた。社会や環境の急激な変化、極度の個人主義、人間の関係性の希薄化や変貌などによって、人命の価値が揺らぎ危機に瀕しているとさえ言えよう。その影響は社会生活のあらゆる側面に及んでいる。最近、このITを中心とする世界はあたかも「仮想現実なのか?」と思えるような、自立したデジタル生物や人間を作り上げようとする「ポストヒューマン」思想にまで展開しているようである。しかも、人生においての安心感や価値観の基準が、宗教・道徳・品格によるのではなく、数理的な統計データによって定められるようになった感がある。
 このような人間の存在や社会の将来を脅かそうとしている動きに歯止めをかけようとする人々が現れてきている。彼らは、遺伝子組み換え作物や効率を優先させる経済を否定し、人生の根源的な問いを考えている。世界の状況が激しく変化する中、宗教や伝統に重きを置いた価値にこそ重んじられるべきものもあると考え、こうした現代の危機への認識から出発し、科学技術のもたらす利便性の拡大とその可能性を利用しつつ、生きる喜び・幸せな人生を見出すために、価値観の多様性と時代の変化への対応を考察してみたい。
 ついては、2016-17年の当セミナーにおける「かかわりを通して得る喜び」というテーマに引き続き、2018年より、教皇フランシスコの使徒的勧告『愛のよろこび』において取り上げられている家族・家庭の諸問題も視野に入れながら、よりよい社会の連帯性と人間の絆を取り戻す宗教、伝統の新たな役割を探っていく。

<過去の開催テーマ>(役職名は当時)
  
「オリエンス・セミナー」の発表・研究をまとめた書籍


『生きる意味――キリスト教への問いかけ』
清水正之・鶴岡賀雄・桑原直己・釘宮明美 編
詳細はこちら

『キリスト教と日本の深層』
加藤信朗 監修 鶴岡賀雄・桑原直己・田畑邦治 編
詳細はこちら

『教会と学校での宗教教育再考――〈新しい教え〉を求めて』
森 一弘、田畑邦治、M・マタタ 編
詳細はこちら

『キリスト教をめぐる近代日本の諸相――響鳴と反撥』
加藤信朗 監修 鶴岡賀雄・加藤和哉・小林 剛 編
詳細はこちら

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