カトリック信者の多い国に生まれた私は、子どものときには、キリスト教の中に他の教派の教会があることをあまり知りませんでした。学校の歴史の授業でキリスト教の分裂についても学んだのですが、その宗教的・政治的な背景については深く説明されなかったのです。 神学校に入ってキリスト教二千年の歩みを振り返る中で、初めてさまざまな教会のことを知るようになり、それぞれの伝統について学ぶことができました。私が神学の勉強を始めたのは、第二バチカン公会議が終わって間もなくでしたので、エキュメニカルな視点は基本でした。 まず、どの教会のメンバーであろうとも、皆がイエス・キリストの弟子として生きようとすることに目を向けるのは大切だと教えられました。キリスト者が同じ洗礼を受けて、世界の中で神の国を証しし、すべての人に福音を伝える使命が与えられている兄弟姉妹であることを深く認識し、そして、お互いに関わることも大切だと学びました。このことと、諸教会の伝統に触れることで自分の視野が広がり、信仰体験が深まっていきます。 現代ではエキュメニカルな試みが実際に多く行われています。ともに聖書を学ぶグループ、さまざまな形での祈りの集い、社会問題への共同での取り組みなどです。これらに積極的に参加し、互いに励まし合うことで、社会が必要としている福音の光が、より強く人々を照らすものとなっています。 エキュメニズムには、さまざまな側面があり、神学者は教義の理解について話し合い、歴史の専門家は過去の分裂の背景を振り返り、共通の理解を求めます。ただ、一番大事なのは、互いにキリストの弟子として認め合って、福音に根差した関わり方を深めることです。 分裂の痛みを感じながらも、それぞれの教会の歩みの中で与えられた賜物を分かち合い、イエスが望んでおられた一致を目指して歩むことが何よりも必要です。本当のエキュメニズムはそこから始まります。 『聖書と典礼』年間第3主日 B年 (2024年1月21日) 表紙絵解説 |