オリエンス宗教研究所は2025年1月11日、10年間にわたり第6代所長を務めて参りましたコンスタンチノ・コンニ・カランバ師(淳心会司祭)に代わり、カブンディ・オノレ師(同)が第7代所長に就任いたしました。ここに新所長からのご挨拶を掲載いたします。 キリスト教一致は不可能ではない 皆様、新年おめでとうございます。年頭のご挨拶を申し上げます。皆様は、それぞれに抱負と新たな希望を持って新年を迎えられたことと思います。 全キリスト教会は、新年を迎えるたびに、キリスト教一致という希望を新たにし、全世界でキリスト教一致祈禱週間を過ごします。この2025年は、ローマ・カトリック教会にとっては通常聖年であり、また全キリスト教会にとっても特別な年です。古来の伝統に従って教皇さまは2025年を通常聖年として宣言されました。と同時に、今年は、コンスタンチノープル近郊のニケアで最初の公会議が開かれてから1700年目にあたります。そのため本年は、全世界のキリスト教会も、ニケア公会議の開催から1700周年を迎えることになり、キリスト教の原点に戻り、キリスト教の在り方をもう一度考えるきっかけとなります。 キリスト教の在り方と言えば、「一致する、一つになること」が思い浮かびます。一つになるということは、イエス・キリストの祈りに由来します。イエスは御父のもとに帰る前に弟子たちの「一致」のために必死に祈りました。 「父よ、あなたがわたしの内におられ、わたしがあなたの内にいるように、すべての人を一つにしてください。彼らもわたしたちの内にいるようにしてください。そうすれば、世は、あなたがわたしをお遣わしになったことを、信じるようになります。あなたがくださった栄光を、わたしは彼らに与えました。わたしたちが一つであるように、彼らも一つになるためです」(ヨハネ17・21-22)。 歴史をたどってみると、信仰を表現するための用語について意見の相違や懸念により、教会は度々悩まされてきました。そのため、共通の解決策を見つけるために公会議が召集されてきました。最初の数世紀において、教会内にはさまざまな問題があるにもかかわらず、キリスト教は一致を保ってきました。325年6月19日~8月25日に開催されたニケア公会議は、イエス・キリストの神性および御父との同質性の否定によって、重大な脅威にさらされていた教会の一致を守ることを目標としていました。その後も、分裂を避けるために、さまざまな取り組みがあり、キリスト教の大部分は、西方教会と東方教会の各々の伝統に従っていたとしても教会は一つでした。こうして一致を保ちながら、数世紀にわたり福音宣教を行いました。 しかし残念ながら、歴史的、文化的、政治的な理由によりキリスト教内に分裂が起き、恥ずべきことに現在も、キリスト教は分裂状態のままに留まってしまいました。現在、分かたれたキリスト教諸派は、各自の伝統に従い、自らが据えた道を歩む姿勢を示しています。けれどもここで、湧いてくる疑問は、「一致を望んだキリスト」を本当に信じているのか。キリストを信じているならば、どうして分裂したままに過ごしているのか、ということです。 今年度のキリスト教一致祈禱週間(2025年1月18日~25日)のテーマは、「あなたは このことを信じますか」(ヨハネ11・26)です。これは、個人または共同体としての信仰の確認を中心としたテーマです。 一致することを信じ、キリストが望んでいるキリスト教一致の実現のために、個人または共同体として何をなすべきかが問われています。ですから、ニケア公会議が一致を守ることを目標にしたことを記念するのは、キリスト者の共通の信仰を振り返るために極めて意義深いことです。ニケア公会議を記念しながらキリスト教一致のために、たとえ小さな一歩でも踏み出していくべきではないでしょうか。例えば、近所にある他のキリスト教各派の信者の方たちと交流を深めて共に祈り、共にキリストからいただいたお恵みを分かち合うことなどがそれに当たります。 この度の通常聖年の中心となるメッセージも、このような小さなステップを奨励しています(教皇フランシスコの大勅書「Spes non confundit(希望は欺かない)」参照)。キリスト教一致と聞くと、「無理」と思う人が多いでしょうが、「神にできないことは何一つない」(ルカ1・37)と、天使が聖母に述べたように、キリスト教一致は無理ではない、とわたしは思います。イエス・キリストに眼差しを注げば注ぐほど、その目標に近づくことができる、と思います。 今年が、キリスト教一致の希望を取り戻す機会となりますように。異なる伝統に縛られているキリスト教が再び一つになるよう、この希望が実現できるように努めましょう。一致した教会に戻るためには、互いに認め合う必要があります。歴史的な事情によって起きた分裂の痛みを癒やし、互いが持っている伝統の違いを可能な限り乗り越えて、イエス・キリストが望んだ一つの教会に戻るように努めましょう。 さて私こと、このたび前所長の任期終了に伴い、オリエンス宗教研究所所長に就任いたしました。所長の重責を担いましたうえは、もとより微力ではございますが、最善を尽くして日本の福音宣教と宗教間対話に全力を傾注する覚悟です。皆様の一層のご指導ご鞭撻を賜りますよう心よりお願い申し上げます。 2025年1月11日 オリエンス宗教研究所所長 カブンディ・オノレ(淳心会司祭) プロフィール・著書 |