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聖書と典礼

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『聖書と典礼』表紙絵解説 (『聖書と典礼』編集長 石井祥裕)
2017年12月17日  待降節第3主日 B年 (紫)
あなたがたの中には、あなたがたの知らない方がおられる(ヨハネ1・26より)

主の洗礼  
手彩色紙版画 
アルベルト・カルペンティール(ドミニコ会 日本)


 洗礼者ヨハネによるイエスの洗礼を描くカルペンティール師の作品をこの待降節に掲げてみた。きょうの福音朗読箇所ヨハネ1章6−8、19−28節では、自分が水で洗礼を授けていること、そして、自分(洗礼者ヨハネ)が「その履物のひもを解く資格もない」(1・27)方が来られることが告げられ、それがイエスの洗礼の出来事を予告する言葉ともなっている。このような文脈構成は他の福音書(マタイ3・11、マルコ1・7、ルカ3・16)とも共通している。絵の場面はイエスの洗礼であるが、それを授けるヨハネの心の中にある思いがきょうの朗読本文が示しているといえるだろう。
 絵の構成そのものは、聖霊が鳩のように目に見える姿でイエスの上に降ってくること(この言及は4福音書とも同じ)、そして、マタイ、マルコ、ルカがともに記す天からの声が、天から突き出た右手によって示されているのは一目瞭然である。ここに父と子と聖霊が鮮やかに表されているのだが、この出来事の実現を仲介する人物として洗礼者ヨハネが大きく描かれているところに、ここでは注目したい。
 洗礼者ヨハネは、待降節の中心人物の一人である。待降節第2主日の福音朗読では、それぞれマタイ(3・1−12)、マルコ(1・1−8)、ルカ(3・1−6)からABC年ともに洗礼者ヨハネの登場の場面が読まれ、そして待降節第3主日ではマタイ(11・2−11)、ヨハネ(1・6−8、19−28)、ルカ(3・10−18)それぞれがヨハネの証言に絡めてイエスが救い主であることを示す箇所となる。
 待降節をイエスの降誕を準備する季節と考えてしまうと、どうして洗礼者ヨハネがこの2週間、登場するのかがわからなくなる。降誕節の終わりの主の洗礼の祝日ならば、これからイエスの公生活、宣教活動が始まる前にある出来事として自然に位置づけられるのに、なぜ洗礼者ヨハネの登場とそのあかしが待降節第2、第3主日に思い起こされるのか。
 待降節が「神の子の第一の来臨」つまり降誕を記念すると同時にその記念を通して、「キリストの第二の来臨の待望へと心を向ける期間」である(「典礼暦年と典礼暦に関する一般原則」39参照)ことがその根底にある。福音朗読は、まずイエスがご自分の洗礼の時をはじめとして、その宣教活動をとおして救い主であることがあかしされていくその始まりを洗礼者のヨハネ自らが示していく。つまり、待降節第1主日では、イエス自身のことばをもとに終末における来臨の待望が第一のテーマとなり、それに向けて心を目覚めさせておくようにとのメッセージが主題であるのに対して、待降節第2、第3主日では、イエスの生涯をさかのぼっていくかたちで、救い主の到来の先駆者となり、それを予告し、あかしした洗礼者ヨハネとイエスの出会い、交わりが語られていく。そして、いよいよ待降節第4主日から、イエスの誕生の予告となる出来事が読まれていくという展開なのである。この日から、終末における主の来臨の予型として、洗礼者ヨハネの登場とそのイエスに対する証言が思い起こされ、そして、さらにその原型にあたる第一の来臨の歴史が物語られ、記念されていく。こうして待降節第4主日から主の降誕、主の公現への流れになる。
 このことを、実は、待降節の叙唱二が簡単に言及している。「主・キリストをすべての預言者は前もって語り、おとめマリアはいつくしみをこめて養い育て、洗礼者ヨハネはその到来を告げ知らせました」という形である。実はこの「洗礼者ヨハネはその到来を告げ知らせました」というところのラテン語原文は、直訳すると、「洗礼者ヨハネはキリストが来られることを予告し、来ていることをあかししました」という文になっていて、ちょうど待降節第2主日の福音と第3主日の福音を受けた形の文になっている。
 待降節で重要人物であった洗礼者ヨハネはまた降誕節のいわば出口、すなわち降誕節の締めくくりをなす主の洗礼の祝日、そしてまだ降誕節の余韻を残す年間第2主日の福音でも登場が続く。こう考えてみると、狭い意味でのイエスの降誕をめぐる出来事の前後を洗礼者ヨハネが囲んでいることになる。幼子イエスを囲むマリアとヨセフのいわゆる聖家族がいつもクローズアップされるが、それに匹敵するほどに洗礼者ヨハネの役割は大きい。2018年は6月24日の洗礼者聖ヨハネの誕生が日曜日となって祝われる年でもある。イエスとの関係の中での洗礼者ヨハネを黙想する年としてもよいかもしれない。

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