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聖書と典礼

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『聖書と典礼』表紙絵解説 (『聖書と典礼』編集長 石井祥裕)
2018年12月02日  待降節第1主日 C年 (紫)
そのとき、人の子が大いなる力と栄光を帯びて雲に乗って来る(ルカ21・27より)

使徒たちを伴う玉座のキリスト
フランス ベルゼ・ラ・ヴィル 
クリュニー修道会礼拝堂壁画 12世紀初め

 使徒たちに囲まれる玉座のキリスト。右手は祝福のしぐさをし、左手には、神のことば、キリストによって完成された律法を象徴する巻物が握られている。その装束も、また玉座に敷かれたクッションにも、細かな描写の手が入っている。キリストの顔は真正面を向き、厳かな、すべてを見通すような目が印象深い。
 ベルゼ・ラ・ヴィルとはフランス中東部ブルゴーニュ地方にある町。そこにあるクリュニー派のベネディクト修道会修道院の聖堂の壁画の一部である。ロマネスク美術を代表する作品の一つに数えられている。ビザンティン様式、あるいはイタリア・ビザンティン様式といわれる流れを汲むと美術史的に解説されるように、祝福のしぐさをし、巻物を携えるイコンのキリスト像との関連は明らかである。
 玉座のキリストという表象は、キリストが復活の後、天に上り、神の右の座に着いているという理解に基づいている。したがって、それは御父の姿を映し出すキリスト像として受けとめることができるものである。厳かさと慈愛の両面が含まれるそのまなざしのうちに、御父である神の面影が感じられる。そのような含みをもつキリスト像は、終わりのときに来られると約束され、民によって待ち望まれる主の姿でもあろう。
 この玉座のキリストの姿を仰ぎながら、ミサの聖書朗読箇所に関する確認を進めて、黙想の手がかりとしたい。きょうの福音朗読箇所は、ルカ21章25−28節、34−36節。ルカ21章の初めから始まる終末についての説教の結びの部分である。終末説教は、マルコ13章、マタイ24章と並行している。朗読箇所前半のルカ21章25−28節はマルコ13章24−27節、マタイ24章29−31節ときれいに並行するところで、細かな語句や表現に違いはあるものの、中心メッセージにあたる「人の子が大いなる力と栄光を帯びて雲に乗って来るのを、人々は見る」(ルカ21・27)はマルコ(13・26)と全く同じで、マタイ(24・30)ともほとんど同じである。この確約のことばがこれらのイエスのことばについての伝承の核となっていたのであろう。
 この文脈の終わりのことばに、ルカでは特色がある。マルコ13章27節では「そのとき、人の子は天使たちを遣わし、地の果てから天の果てまで、彼によって選ばれた人たちを四方から呼び集める」。マタイ24章31節も同趣旨である。ところが、ルカでは、「このようなことが起こり始めたら、身を起こして頭を上げなさい。あなたがたの解放の時が近いからだ」(ルカ21・28)となっており、独特である。この「解放」とは「贖(あがな)い」と訳せるように、奴隷解放のイメージも含んでいる。この終わりの時のキリストによる解放の歴史的意味を考えさせるために、第1朗読はエレミヤの預言で、イスラエルとユダの国に救い主として王が来られることを約束する一節(エレミヤ33・14−16)が告げられる。これに対して、キリストによる解放は、もっと普遍的であることをルカは説く。「その日は、地の表のあらゆる所に住む人々すべてに襲いかかる」(21・35)という警告は、裏返すと、人の子の来臨が地のすべての人の救いとなることを告げ知らせるものだからである。
 朗読箇所の結びにある「人の子の前に立つことができるように、いつも目を覚まして祈りなさい」(ルカ21・36)という呼びかけは、待降節第1主日に共通する。主の降誕に向かっての準備の季節の始まりのメッセージであるだけでなく、それは、一年の典礼暦を貫くテーマでもある。神の右の座におられ、いつも御父とともに「世々に生き、支配しておられる」(集会祈願の結句)御子キリストのこの姿は、典礼暦年全体の導き手の姿でもある。
 福音朗読がルカ福音書を中心とするC年には、この福音書の学びも共にしていきたい。全体的な学びのためには、三好迪著『ルカによる福音書−旅空に歩むイエス』(日本基督教団出版局)が整っている。典礼暦年に従う福音朗読箇所を見ていくためには、たとえば、和田幹男『主日の聖書を読む−典礼暦に沿って(C年)』(オリエンス宗教研究所)、雨宮慧『主日の福音(C年)』(同)が必携である。

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