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聖書と典礼

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『聖書と典礼』表紙絵解説 (『聖書と典礼』編集長 石井祥裕)
2018年12月09日  待降節第2主日 C年 (紫)
人は皆、神の救いを仰ぎ見る(福音朗読主題句 ルカ3・6)

福音記者ルカ   
挿絵 『アーダ福音書』  
ドイツ トリール市立図書館 800 年頃

 福音記者ルカはどのような人だったのだろうか。−−そんな問いかけを抱いたことがあるだろうか。今年は、主日の福音朗読C年で、ルカ福音書が中心ということで、中世の写本画のルカ像を掲げた。ソファに腰掛け、白紙の本を広げ、右手にはペンをもっている。頭の上には、4福音記者のシンボルの中で、ルカに当てられる雄牛が描かれている。白く女性的にも思えるその顔は、ルカ福音書が貧しい人々や女性たちに光を当て、神のいつくしみを強調したといわれる特徴とも重なる。
 キリスト教美術の展開の中で、イエスの生涯の各場面を表現するという傾向は4−5世紀以降、聖堂のモザイクや初期の聖書写本を通して徐々に発展し、中世になると朗読福音書において全面的に開花する。それと並行して、各福音記者たちへの崇敬も高まり、この解説の中でたびたび言及する4福音記者のシンボル像も登場し、人=マタイ、ライオン=マルコ、雄牛=ルカ、鷲=ヨハネという割り当てが定着するようになる。この4つのシンボルが、荘厳のキリスト、玉座のキリストと呼ばれるキリスト像の周りを飾る型の図像が頻繁に描かれ、ときには、そこに4人の福音記者の肖像が組み合わされるようにもなる。やがて、表紙絵のように、各福音記者が単独で描かれる型の図も増えていった。
 中世においては、書物はまだ限られた人しか読めなかったということもあり、ある種特別の権威を放った。とくに聖書は神のことば、人となったみことばであるキリストの象徴として特別な崇敬が向けられる。頭文字装飾や挿絵が発展する土台である。福音書の内容だけでなく、「○○による福音」と呼ばれるように、神の霊感を受けてキリストのことをあかししてくれた存在として、記者たち自身が敬われたという事実は、再評価してよいのではないだろうか。現代の聖書学を通して、マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの各福音書記者たちが諸伝承をもとにどのように全体を構成し編集し、総合したかがますます注目されている。各記者のキリスト理解の特徴がよりはっきりと取り出されるようになり、新たな意味で、各記者たちの著者性が評価されるようになってきたのである。
それは、簡単な並行箇所の比較を通しても見えてくる。きょうの福音朗読箇所である、洗礼者ヨハネの登場の場面でも、マルコ(1・3)、マタイ(3・3)ではイザヤの預言40章3節だけを引用したかたちで「荒れ野で叫ぶ者の声がする。『主の道を整え、その道筋をまっすぐにせよ。』」とあるだけなのに対して、ルカではもっと先まで引用する。イザヤでは、「谷はすべて身を起こし、山と丘は身を低くせよ。険しい道は平らに、狭い道は広い谷となれ。主の栄光がこうして現れるのを、肉なる者は共に見る」(40・4−5)とある部分を、ルカは「谷はすべて埋められ、山と丘はみな低くされる。曲がった道はまっすぐに、でこぼこの道は平らになり、人は皆、神の救いを仰ぎ見る」(3・5- 6)という形で受けている。
 洗礼者ヨハネは悔い改めを呼びかけ、「罪の赦しを得させるために悔い改めの洗礼を宣べ伝えた」(ルカ3・3)。それがすべての人にとっての救いの訪れを告知するものであることを、ルカは明示しようとしている。それはすでに主の公現のメッセージである。
異邦人への福音宣教を意識した福音書と使徒言行録の著者であるルカは、イエス・キリストによる救いの普遍的到来を、すべての人に向けての福音として書き記している。主の降誕の叙述の中でも、その意図を示していたルカは、ここで、「人は皆、神の救いを仰ぎ見る」というメッセージをもって、洗礼者ヨハネの登場を語っている。教会の信仰の一つの姿として、ルカの筆の個性が感じられるここの叙述も味わってみたい。神の栄光をキーワードとする第1 朗読(バルク書5・1−9)、第2 朗読(フィリピ1・4−6、8−11)をともに味わいながら。

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