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聖書と典礼

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『聖書と典礼』表紙絵解説 (『聖書と典礼』編集長 石井祥裕)
2019年6月16日  三位一体の主日 C年 (白)
全能の神、父と子と聖霊にとこしえの賛美(入祭唱より)

三位一体 祈禱書挿絵  
パリ サント・ジュヌヴィエーヴ図書館 
15世紀

 三位一体の神秘などはたして絵に描けるものだろうか。キリスト教の神についての教えの核心をなす三位一体の神秘は、それでもキリスト教美術においてさまざまな画像化が試みられている。
 「主の洗礼」の図などがもっとも古い三位一体図といえるかもしれない。聖霊が鳩の姿で描かれるという形式はその後の伝統となる。ただ、この場合は、御父は天から右手を差し下ろすという描き方となる。御父は究極の神秘なので図にしようがないという旧約以来の精神の名残と考えられる。この“しばり”が解けてくるのが中世の図で、御父も人の顔をもった姿で描かれるようになる。すると、父も子も聖霊もすべてが人の顔をもつ姿で三者が居並ぶ形で描かれる三位一体図が現れるほどである。その一方で、三位一体図とキリスト磔刑図を組み合わせるという方式も有力な伝統となる。十字架においてこそ、御父の愛が現れたとして、人の顔をもつ姿で描かれる御父が十字架のキリストを抱いているという構図の上に、鳩の姿の聖霊が降臨している。十字架の神秘と三位一体の神秘の組み合わせはなかなか味のあるもので、広く普及していく。
 そのような伝統から見ると、表紙絵の三位一体図は、きわめてユニークである。向かって右側に、三重冠をかぶって描かれるのが御父、その姿と対称的な位置に、しかも身体的には一つにくっついている形で、向かって左に御子キリストが描かれている。両者は見つめ合っており、また御父の左手と、御子の右手が一つの書物(神のことばのしるし)を支えあいながら保持している。その両者の間に、白い鳩の姿の聖霊がいて、御父と御子の両者の胸のあたりを結びつける位置にいる。文字どおり、ここには三つのペルソナの一致が表現されている。御父の足下には丸い天球のものがあるが、これは、宇宙のしるしで、三重冠とともに、御父が天地万物の支配者であることを示している。人の顔をもち、白髪と長い白髭をもって長寿の存在として示されるのも、いつくしみ深く、全能であり、永遠である御父のイメージの表現法であろう。
 このように描かれる三位の背後には、栄光を示す光背であり、外に向かう光の放射がダイナミックに描かれている。周囲に描かれている赤いもの、翼が特徴的な赤いものは、イザヤ書6章3節、「聖なる、聖なる、聖なる万軍の主……」と賛美するセラフィム(六つの翼をもつ存在)の造形だろう。天使的存在の先駆形態ともされる。
 ここに描かれる三位一体のイメージは、ミサと深く関係している。たとえば、集会祈願の長い結び。「聖霊の交わりの中で、あなたとともに世々に生き、支配しておられる御子、わたしたちの主イエス・キリストによって。アーメン」のところである。御父と御子がともに永遠に生きて、被造物である天地万物を支え、配慮し、導いていること、そしてそれが聖霊による交わりの中で営まれているという理解がこの図とよく響き合う。そして、上述のイザヤの箇所がとりこまれている「感謝の賛歌」。叙唱の終わりに、たとえば「神の威光をあがめ、権能を敬うすべての天使とともに、わたしたちもあなたの栄光を終わりなくほめ歌います」と告げられて始まる「感謝の賛歌」は、天上の礼拝と地上の礼拝が一致して行われているというミサ典礼のより深い姿を示すが、それも、この絵とともに味わうことができる。
 さて、三位一体の主日は、この神秘を表す教理的な内容をとくに主題として掲げる祭日であるが、三位一体の神秘は、キリスト者の生活・存在のすべてに関わり、もちろん、ミサの全体にも深くかかわっている。ミサがミサであるかぎり、いつも三位一体の神との交わりにほかならない。「父と子と聖霊のみ名によって。アーメン」で始まり、「全能の神、父と子と聖霊の祝福が皆さんの上にありますように。アーメン」で結ばれるところにその一端は示されている。このことへの同意、三位一体の神への賛美と賛美を示す意味をもつのが、それぞれの結びの応唱「アーメン」。このことばに、いっそう深く心をこめていくことにしたい。

 きょうの福音箇所をさらに深めるために

イエスがそれまでに一なる神の内にある多数性について与えられたヒントをすべてまとめて、三位一体の神秘を完全な形で弟子たちに示したのは、十字架につけられる前の最後の晩餐のときでした(ヨハネ14・6-26参照)。その死によって、子は「救世主」と呼ばれるのです。
(オリエンス宗教研究所 編『キリスト教入門―生きていくために』「第7講 父と子と聖霊」)本文より


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