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聖書と典礼

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『聖書と典礼』表紙絵解説 (『聖書と典礼』編集長 石井祥裕)
2019年12月08日  待降節第2主日 A年 (紫)
エッサイの株からひとつの芽が萌えいで…… (イザヤ11・1より)

エッサイの樹   
イタリアで作られた聖書写本挿絵 
マドリード エスコリアル図書館 13世紀

 エッサイとはダビデの父である。そして、イエスはダビデの家系に生まれたということがルカ福音書(1・68-69のザカリアの言葉の一節「主はその民を訪れて解放し、我らのために救いの角を、僕ダビデの家から起こされた」と3・23-38の系図)とマタイ福音書(1・1-17の系図)からも伝えられる。また、黙示録では、イエスのことばとして「わたしは、ダビデのひこばえ、その一族、輝く明けの明星である」(黙示録22・16)と告げられている。
 このような、ダビデの家系の子としてのイエス理解に連なって、ダビデの父エッサイの名がクローズアップされることになるが、その重要な典拠が、きょうの第1朗読で読まれるイザヤ11章1節-10節である。「エッサイの株からひとつの芽が萌えいで、その根からひとつの若枝が育ち、その上に主の霊がとどまる」(1-2節)……「その日が来れば、エッサイの根はすべての民の旗印として立てられ、国々はそれを求めて集う。そのとどまるところは栄光に輝く」(10節)。
 この預言は、新約の視点からは、もちろん救い主キリストの到来を約束するものとして受けとめられる。パウロもこのイザヤ書11章1節と10節を念頭に置いて、きょうの第2朗読で読まれるローマ15章4-9節に続く文脈の中で、「エッサイの根から芽が現れ、異邦人を治めるために立ち上がる。異邦人は彼に望みをかける」(ローマ15・12)と述べる。すべての人の救い主であるイエス・キリストを告げ知らせるところであり、エッサイの株または根という表象において、イザヤの預言とパウロのことばが結びついている。
 このような理解を土台にして、マタイの記すアブラハムからイエスまでの系図、ルカの記すイエスからアダム・神まで遡る系図を参考にしながら、エッサイから出る系統樹のイメージをもって救いの歴史を表すのが「エッサイの樹」という画題伝統である。特に12世紀以降、朗読福音書の挿絵やステンドグラスで好んで描かれた。13世紀には表紙絵のように、この系統樹にマリアも加えられるようになる。系図の末尾にマリアへの言及があるマタイ1章16節の「ヤコブはマリアの夫ヨセフをもうけた。このマリアからメシアと呼ばれるイエスがお生まれになった」がその一つの根拠となる。
 表紙絵は、エッサイの姿、最上のキリスト、その下のマリアは判別できるが、系図の途中を示す4人の人物には、アーモンド型の房のような枠があり、エッサイのすぐ上のダビデをはじめ救いの歴史の節目を担う人物であることは確実であろう。それらをつなぐ円形の中の人物にもそれぞれ文字が記銘されているが読み取れず、細かな表象も難解である。ここでは、エッサイとダビデからの系統樹のもつ意味を鑑賞することにしよう。ちなみに、エッサイからキリストまで七人いる。そこに何か意味を感じてもよいかもしれない。七は聖なる数の一つであり、ここでは、聖霊の七つの賜物を連想せずにはいられない。きょうの第1朗読の中のイザヤ11章2節がエッサイの根から育った若枝の上に「主の霊がとどまる。知恵と識別の霊、思慮と勇気の霊、主を知り、畏れ敬う霊」と告げているからである。「畏れ」と「敬う」がそれぞれ一つと数えられて、主の霊(聖霊)の七つの賜物を語る箇所と受けとめられ、堅信式の祈りとなる文言である。
 人は、洗礼と堅信を受けて、イエス・キリストと結ばれ、聖霊に生きる者となる。その意味ではエッサイの樹はキリスト者自身のルーツを映し出している。もちろん、ルカの系図が遡るようにその源は神である。
 最後になるが、福音朗読箇所(マタイ3・1-12)に登場する洗礼者ヨハネは、キリストの到来すなわちすべての人を救おうとする神の計画の実現を予告するものとして登場している。エッサイの樹のゴールが間近いことを示すヨハネの登場は、キリストを迎える準備の呼びかけそのものである。

 きょうの福音箇所をさらに深めるために

待降節第二主日

小さい子供がそれらを導く
待降節には、内容豊かで美しいメシア預言が数多く朗読される。メシアとは、その用語の意味に変遷があるが、ここでは神が救いのためにイスラエルの民に送ってくださる理想的な王のことと言っておこう。その到来を約束する預言をメシア預言ということとする。

和田幹男 著『主日の聖書を読む──典礼暦に沿って【A年】』「待降節第二主日」本文より

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