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聖書と典礼

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『聖書と典礼』表紙絵解説 (『聖書と典礼』編集長 石井祥裕)
2020年1月1日  神の母聖マリア (白)
マリアはこれらの出来事をすべて心に納めて、思い巡らしていた(ルカ2・19より)

聖母子 
イコン     
キプロス コイラニ教会美術館 14世紀

 この聖母子像は、ビザンティン・イコンで「エレウーサ」(いつくしみの聖母)と呼ばれる型のものである。その特徴は、マリアが頭を少し傾けて、幼子と頬を合わせているところに趣(おもむき)がある。幼子を両手で抱えているマリアの姿勢が印象深い。この幼子と一体のまま、マリアのまなざしは真正面(鑑賞者)のほうを見ている。マリアと幼子の間に起こった出来事の意味を静かに訴えかけているかのように。
 幼子はどうかというと、やや不自然なのだが、体は向こうに向き、右手を下げ、左手をマリアの衣の襟首あたりに掛けている。つまり、幼子の頭は左に回る形で、こちら側に向かい、左の頬を見せている。きわめて平面的に書かれるイコンだが、そのマリアの身体と幼子の身体の位置関係は立体的なものである。
 暗色の衣は、神の子の誕生において現れた神の栄光の光を輝かせるいわば土台、舞台のような役割をしている。背景のうちによく見るとマリアの頭と幼子の頭の光輪の模様が豊かに描かれている。こうして、光に満たされている、あるいは幼子から放射される光の中に聖母子が一体となって存在しているといえよう。それは、マリアのまなざしが示すように、人類すべてにとって救いの実現を告げ知らせているようである。逆に、マリアが、救い主である幼子に全人類の救いを心と身体を通じて願っているともいえる。幼子を抱き、また示すマリアの姿は、救い主の訪れを神のみ旨とともに受け入れた人類の代表であり、教会のひな型でもある。同時に今なお救い主キリストに人類の救いを願う、執り成す方でもあるのである。
 1月1日は教会暦では元日というよりも第一には12月25日から8日目という意味が大きい。ローマ教会はこの日を神の母聖マリアの日として、ルカ福音書(きょうの朗読箇所2章16-21節)が告げるような、「乳飲み子」(16節)とともにいるマリアの姿や天使のお告げ、これらの出来事すべてについてひとりマリアだけが「心に納めて、思い巡らしていた」姿(19節)を記憶の中に大きく刻み、幼子イエスへの礼拝とともにマリアへの崇敬が深められていくもととなっていく。
 主の降誕の8日目にあたって、天使ガブリエルのお告げ(ルカ1・31)に従って「イエス」と名付けられる。この名は、マタイ福音書1章21節では「この子は自分の民を罪から救うからである」と説明されていて、救い主であることを意味する名である。このことをイザヤ書7章14節に寄せて「インマヌエル」という名でも説き、それを「神は我々と共におられる」と説明するのがマタイである(マタイ1・23)。マタイによってもルカによっても、人となった神の子である救い主としての地上の生涯の始まりが待望の中で刻まれる。神の御子である方が人となり、救い主として現れたことが輝かしく明らかにされ、そのことを第2朗読のガラテヤ書4章4-7節をもって思い起こす。
 実はイエスのことを「神は我々と共におられる」とマタイが説き明かすのと似て、ルカ福音書では、天使ガブリエルがマリアに「おめでとう、恵まれた方。主があなたと共におられる」と告げる(ルカ1・28)。いうまでもなくアヴェ・マリアの祈りの冒頭である。そして、まぎれもなく祝福の告知である。イエスの誕生によって人類は再び神に祝される存在となったのであり、その祝福を真っ先にもっとも深く、もっとも親密に受けていたのがマリアであったにちがいない。そしてマリアのまなざしは、この祝福を我々にも向けようとしている。
マリアと幼子が一体となった親密な姿を示すイコンは、こうして、神が人類にもたらされた祝福と恵みと平安(第1朗読 民数記6・22-27)を映し出している。

 きょうの福音箇所をさらに深めるために

神の母から教会の母へ、教会の母から神の母へ
二〇一二年十月から翌年の十一月まで開催された「信仰年」では、第二バチカン公会議(一九六二-一九六五年)開幕五十周年ということで、特に同公会議の教えを学ぶ機会ともなり、公文書の改定公式訳も出版された。
 同公会議はマリア論にとっても大きな転換をもたらした。マリア論の草案は、当初、特別な委員会によって準備されたが、討議が進むに従い、その草案は教会論の中で位置づけられることとなった。その結果、マリア論は教会憲章の最終章を飾ることとなり、マリア論そのものも大転換することとなった。以前は「神の母」マリア論であった。これを否定はしないが、以後は「教会の母」マリア論となった。
和田幹男 著『主日の聖書を読む──典礼暦に沿って【A年】』「神の母聖マリア(1月1日)」本文より


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