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聖書と典礼

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『聖書と典礼』表紙絵解説 (『聖書と典礼』編集長 石井祥裕)
2020年6月14日  キリストの聖体  A年(白)  
このパンを食べる者は永遠に生きる  (ヨハネ6・58より)

パンと魚を分けるイエス 
ロッサーノ朗読福音書挿絵 
イタリア ロッサーノ大司教館付属美術館 6世紀


 紫羊皮紙というものが使われていた6世紀の聖書写本の挿絵である。挿絵としては初期のものになり、イエスの姿も、後に一般化するものとは異なっている。だが、弟子たちに食べ物を渡すしぐさも、そしてなによりも目つきが力強い。
 キリストの聖体A年のきょうの福音朗読箇所は、ヨハネ6章51-58節である。この6章の最初1-14節では、イエスが五つのパンと二匹の魚で、5000人の飢えを満たし、なお余りがあったという、どの福音書にもみられる出来事が語られている。6章22節以下がその翌日の話で、きょうの箇所はその終わりのほうに近い。全体の話のきっかけとなった、五つのパンと二匹の魚の話にちなんだ絵を眺めながら、キリストの聖体について黙想していくことにしたい。
 この6章22節以下の人々との対話の中で、「永遠の命に至る食べ物のために働きなさい」(27節)、「神のパンは、天から降って来て、世に命を与えるものである」(33節)という予告の後、「わたしが命のパンである」(35節)とイエスは言われる。同時にこのことと、もう一つのメッセージが語られる。「わたしの父の御心は、子を見て信じる者が皆永遠の命を得ることであり、わたしがその人を終わりの日に復活させることだからである」(40節)と、永遠の命、復活ということがテーマのことばである。イエスはこのことの原動力となるということで、救い主であることの宣言にほかならない。「わたしが命のパンである」ということは、イエスが、イエスを信じる人々の永遠の命の原動力となるということの一種のイメージ表現である。
 このメッセージが土台となって、きょうの朗読箇所である51~58節は、さらに焦点を絞って「わたしが与えるパンとは、世を生かすためのわたしの肉のことである」(51節)、「人の子の肉を食べ、その血を飲まなければ」(53節)、あるいは「わたしの肉を食べ、わたしの血を飲む者は」(54節)と、イエスが与える、自らの肉と血にテーマが移っていく。これが、一般に、聖体に関する教えとされる。
 我々のミサ体験の中での聖体拝領というと、現在用いられている形態のものでイメージし、その意味は、と考えていくことになるが、福音書の語り方は、まずイエスとは何者か、だれであるか、を語るために、イエス自身が「命のパン」であるというイメージが豊かに語られる。実際に五つのパンと二匹の魚で人々を満たしたという奇跡のうちにも、イエスが救い主であることが示されるが、ここのイエスのことばで、その意味がさらに明言されている。永遠の命への復活のために、イエスは人々に受け取られて、その人々の中で生きていき、御父とその人々を結ぶ役割を果たす。イエスが与える肉と血は、信仰者の共同体の中で受け取られつつ、まさしくイエスによる御父との交わりへと人を導いていくこととなる。
 そのことを思いながら、表紙絵のイエスの姿とその表情を見ていると、その中に御父の姿が映し出されていることを感じてならない。威厳あるイエスの姿は、御父と御子の交わりそのものの姿でもある。
 このようなヨハネ福音書によるイエスの肉と血についての教えは、第2朗読の1コリント書(10・16-17)に記されるパウロの教え方と引き合わせながら受けとめると意義深い。ここでは「肉」ではなく「体」という語が使われ、「……賛美の杯は、キリストの血にあずかることではないか。わたしたちが裂くパンは、キリストの体にあずかることではないか」(16節)と告げられる。ここで「あずかること」と訳されているギリシア語の単語はコイノーニアで、直接には「交わり」意味する。ラテン語になるとコムニオで、これは、現在でもミサの聖体拝領の部分を表す正式な用語である。聖体の意味を「キリストにあずかること(=交わること)」だと告げるパウロの言葉は、ヨハネ福音書の「わたしの肉を食べ、わたしの血を飲む者は、いつもわたしの内におり、わたしもまたいつもその人の内にいる」(ヨハネ6・56)という言葉で見事に解説されているといえる。どちらも、ミサのとき、特に聖体拝領のときに、いつも心で繰り返したい言葉である。

 きょうの福音箇所をさらに深めるために

「心」を育てるために「形」を整える
 大切なことは、知識や形式を教えることだけでなく、子どもたちの「心」を神さまに向けさせ、成長させていくことです。目に見えない「心」を育てていくためには、まず、目に見える「形」を整えていくことも大切です。そのためには、大人が率先して模範を示すことです。


大塚了平 著『わたしたちのはつせいたい――イエスさまとつながろう!』「初聖体に向けて指導をされるみなさまへ」本文より

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