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コラム

日本で生まれ育った子どもたちの強制送還――「世界難民移住移動者の日」コラム一覧へ

大迫こずえ(カトリック東京国際センター)
 世界的な規模で新型コロナウイルス感染症が拡大し、今なお収束していませんが、そこでとくに懸念されるのが外国人労働者の境遇です。彼らの多くは、狭い共同住宅で暮らし、経済的理由で体調が悪くても仕事を休むことはできず、「密」な状態の工場で働き続けていました。 
 実は日本でも、生活基盤の弱い外国人労働者が補償のないまま休業を余儀なくされ、食事に困り、就労の許されていない仮放免者たちが、狭いアパートで、ソーシャルディスタンスや消毒とは無縁な生活を送っています。
 ネット上では、このような移民・難民に対して、「追い返せ」「外国人に税金を使うな」「外国人に国民と同じ権利と保護があると思っているのか」などの言葉があふれています。そして以前は、「とても国籍国には送り返すことはできない」と在留を特別に許可されていた、日本で生まれ育った子どもたちが、ここ数年、言葉も文化も異なる国に強制送還される対象となっています。
 日本で知り合い、国際結婚した両親の難民認定申請が不認定となったケースでは、小学校六年生の子に求められたのは、父親と中国に帰るか、母親の国スリランカに帰るかの選択でした。また、非正規滞在の両親のもとに日本で生まれ、日本で育った青年のケースでは、二十一歳になって間もなく入国管理局に収容されてしまいました。現在は日本人女性と結婚し、娘も誕生していますが、彼が送還される理由は、非正規滞在の両親のもとに生まれたからです。こうして日本の文化や言葉しか知らない子どもたちは、生きてゆくことが困難な国に送られ、その後のことを考えてくれる人はほとんどいません。
 「主は彼らを通してわたしたちに、回心して、排他主義、無関心、使い捨ての文化から解き放たれるよう呼びかけておられます」(第一〇五回「世界難民移住移動者の日」教皇メッセージより)。フランシスコ教皇は、このような移民、難民の問題を、経済的に繁栄している社会の中で、自分たちの安心安全のことだけを考え、他者を気遣う感受性を失くし、他者の人間としての尊厳に無関心になった結果だとして注意を促します。世界人権宣言採択から七十年以上を経た今、私たちがキリスト者として行うべきこととは何かを明確に見つけなければならない時がきていると感じています。
(『聖書と典礼』2020年09月27日より)

『聖書と典礼』年間第26主日 A年(2020年09月27日)表紙絵解説

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