被昇天の聖母の祭日おめでとうございます。 平和旬間中のこの祭日が来ると、晴れ着を着てミサに参加したことと、長崎の家で母の作った「ふくれまんじゅう」を食べたときの、白い皮の柔らかさとあんこの甘さが、いつも思い出されます。かつて、キリスト教が禁教だった日本の歴史と深い関係があるとされる故郷の「ふくれまんじゅう」の味は、まさに平和と信教の自由の尊さを感じさせるものでもあります。 私の奉職する東京・赤羽にあるサレジアン国際学園中学校高等学校では、「共に喜び、共に生きる(アシステンツァ)」教育を基礎とし、「二十一世紀に活躍できる世界市民の育成」を目標としています。新入生は、まず四月に「二十一世紀」という時代が、どのような時代なのかを認識するために話し合いをします。 今年は、国の大型研究プログラムである「Human Well-being(人々の幸福)」を目指した「社会」「環境」「経済」の各目標について討論をしました。生徒たちの思い思いのプレゼンテーションを聞きながら、日本の国の目標として、人々の幸福の実現を打ち出しているということは、いまでは時代が着実に、キリスト教的な価値に歩み寄っている証拠ではないかと感じました。そして、すべての人の幸せを目指すことこそが、平和実現のために働くことになるのではないかと考えさせられました。 それは私たちキリスト者が、平和のために国内外のさまざまな問題を直視しながら、「ともに歩む教会のため―交わり、参加、そして宣教」(第16回シノドスのテーマ)に向かうことであり、「誰一人取り残さない」(SDGsの前文・宣言)道を模索するチャンスだとも思います。と同時に、「ふくれまんじゅう」を膨らませるイースト菌と適度な温度のように、それぞれが自分と周りの人が幸せになる「パン種」となることで、教会の中から平和な世界を大きく膨らませる時でもあるのではないでしょうか。 私自身も、自分と周囲の人々の幸福のために活躍できる生徒たち、「世界市民」を世に送り出すことで平和の「パン種」となれるよう、日々の教育活動に励んでいきたいと願っています。(『聖書と典礼』2023年8月15日)) 『聖書と典礼』主の変容 (2023年8月15日)表紙絵解説 |