「レバノンは小さな国でありながら偉大な国であり、それ以上に中東から世界に向けて発せられた平和と友愛の普遍的なメッセージです」(教皇フランシスコ「レバノンのための祈りと考察の一日」メッセージ、二〇二一年七月一日)。中東の小さな国レバノンには、十八の異なる宗教・宗派の人々が共存しています。内戦と隣国との戦争の傷を負い、長引く政治・社会・経済危機に国民は苦しんでいます。国内には数々の諸宗教間の対話と共存促進のための協会がありますが、ここでは、諸宗教間対話と共存共生は、まずは日常生活での人間関係の体験です。 私の会の兄弟姉妹、レバノン南部に住むクロードとジョルジュは夫婦で公立小学校の先生です。約四十年前の内戦の最中、二人はイスラム教徒の住む地区の学校に転勤するように言われました。その地区ではキリスト教徒への反感が強まっていたので、彼らは危険を感じ、その転勤を拒否しようとしました。しかし、これは、神様の思し召しで、自分たちを通して神様がそこにキリストの愛と平和を広めようとなさっているのではと思い直し、転勤を決意しました。 毎朝、学校の始まる前に二人で、自分たちがキリストの似姿になり、キリストの愛を伝えることができますようにと祈り、学校の生徒たちを自分の子どものように愛しました。ある日、イスラム教の宗教の先生が、ジョルジュのことを「異教徒!」と批判したところ、「ジョルジュ先生はとてもいい先生です!自分の子どものように私たちを愛してくれています!」と、生徒たちがかばってくれました。この相互の愛は主からの賜物でした。 きょうはマリア様の祝日です。「私にも主は目を留めてくださった」(ルカ1・48参照)と歌ったマリア様とともに、まずは自分に注がれた父なる神様の愛のまなざしを受け入れ、自分、そして隣人が、神様に無条件に限りなく愛された、かけがえのない唯一の存在であることを深く味わいたいと思います。そして、神様からいただく、愛と平和、兄弟愛のお恵みを周りに広げていくことができますように。 『聖書と典礼』聖母の被昇天 (2024年8月15日) 表紙絵解説 |