年の初めの頃、仙台教区では、増え続けているベトナム出身の方たちの現状を知るべく、勉強会が開かれました。会場には溢れるほど信者たちが集まり、技能実習生や日本語学校の学生、就労などで来日しているベトナム人の現状について、ベトナム人の司牧に携わっているシスターから話を聞きました。同教区には五百人近くのベトナム人がいること、中には仕事に追われて日曜のミサにも参加できず、苦しんでいる人もいるそうです。そして、これまでシスターが関わった警察や病院、職場でのトラブルに対する相談、実習生の妊娠ケースなど、さまざまな問題を話してくれました。 参加した多くの日本人信者たちは、「知らなかった」と言っていました。来日前に百万円ほどの借金をして来ることも、妊娠したら強制的に帰国させられていることも「知らなかった」人は多いようでした。この勉強会では、外国からの移住者の現実を日本の信者さんたちが知る機会となって教会で何ができるか、どうすれば彼らとともに歩む教会になれるのかなどを話し合う良い機会でした。 ただ、個人的に皆さんにもっと知ってほしいのは、移住者を排除の対象としている入管法における「構造的差別」です。「構造的差別」とは、法律や社会の仕組みによって、人種や性別・国籍などの特定の属性を持っている人たちが、日常生の中で差別を受けてしまうことを言います。その差別は、社会的ステータスが低ければ低いほど受けやすいもので、まさしく安定した在留資格を持たない移住者は、常に就職や居住の自由が制限され、場合によっては妊娠・出産の権利も認められないわけです。 「構造的差別」を変えられるのは、この社会のマジョリティです。いくらマイノリティの人たちが声を上げるとしても、マジョリティが動かないと社会は変えられません。この実態を知ること、移住者を排除の対象とする「構造的差別」の側のサイレントマジョリティにならないことも、主なる神から受けた使命ではないでしょうか。 「寄留者があなたの土地に共に住んでいるなら、彼を虐げてはならない。あなたたちのもとに寄留する者をあなたたちのうちの土地に生まれた者同様に扱い、自分自身のように愛しなさい」(レビ記19・33)。 ※本欄は『カトリック札幌教区ニュース』48号(8ページ「ともに生きる サイレントマジョリティ」)のコラムでも紹介されました。 『聖書と典礼』年間第26主日 B年(2024年9月29日)表紙絵解説 |