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聖書と典礼

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『聖書と典礼』表紙絵解説 (『聖書と典礼』編集長 石井祥裕)
2020年1月5日  主の公現 (白)
主の栄光はあなたの上に輝く(イザヤ60・1より)

東方三博士の礼拝  
モザイク  
ローマ サンタ・マリア・イン・トラステヴェレ聖堂 1291年

 主の公現の祭日は、東方の占星術の学者たちが幼子を礼拝した出来事を記念する。福音朗読箇所マタイ2章1-12節が語る出来事である。この出来事が、すべての人を救う神の子の栄光の現れであるという意味で「現れ」を意味するギリシア語のエピファネイア、ラテン語のエピファニアで伝えられるようになり、これを日本語ではすべての人のための現れという意味で「公現」と訳す慣例となっている(ちなみに東方教会でエピファネイアは、主の洗礼の祝日となっているが、西方では、諸民族の光であるキリストの栄光が輝いた日という意味で、マタイのその出来事を記念する)。
 マタイの叙述の中で、礼拝に来た学者たちの数は聖書に記されていないが、やがて、3つの贈り物にちなんで3人と考えられるようになる。そして、きょうの第1朗読のイザヤの預言「国々はあなたを照らす光に向かい、王たちは射し出でるその輝きに向かって歩む」(イザヤ60・3)ということばも併せて、これらの学者たちの礼拝の旅路を王たちの行動として味わわれるようにもなっていく。
 劇的感動を含む出来事であるため、キリスト教美術の初期から好んで描かれる場面となったが、王の礼拝であるという解釈が美術にも定着するようになる。その際、3という数は、三位一体を思い起こしても納得されるように、多様性と一致の意味合いを含む。礼拝のうちにあらゆる人への救いの恵みに対して、あらゆる人から感謝と礼拝がささげられるという交わりの感動が「3」人の王の描写にあふれてくる。この3人が3世代、すなわち青年・壮年・老年を表すと考えられて、そのように描き分けられるようになるのも一つの流れである。
 13世紀末のモザイク作品である表紙のモザイクは、はっきりと、前で身をかがめる老年、すぐ後ろの壮年、最後尾の青年というように描き分けていることは明らかである。3つの贈り物、黄金・没薬・乳香のどれをかかげているだろうか。真ん中の四角の器は黄金かもしれないが、どちらも香料であるところの没薬・乳香が前の器か、後ろの蓋付きの器か判別しにくい。いずれにしても、この3人の動きにはリズムがあり、まさにささげようとしている瞬間を描こうとしていることがよくわかる。
 「3人」の王たちとのバランスで、迎える側にも幼子イエス、マリアに加えて、聖書の記述にはないヨセフが描かれていることも興味深い。そして、公現の図の場合、幼子イエスにはすでに王の中の王と呼ぶべき威厳をもって描かれる伝統もあったが、ここでのマリアも素朴な母の姿であり、イエスも人間的な幼子らしい姿で描かれている。王の尊厳を示す場合、幼子が右手で祝福を送るしぐさをもって描かれるが、ここでは、ほんとうに子どもがおもちゃでももらうときのように、両手を差し出して受け取ろうとしている。このようなところに、人間的情愛を重視して表現するようになるゴシック時代以降の傾向がすでに窺われる。もちろん3人の王の礼拝を迎え入れるのは、救い主としての尊厳を有している方にほかならない。そのような幼子の王的尊厳は、マリアの姿、そしてマリアが座っている座席の立派さ、背景にある建物の壮麗さが示しているのだろう。
 先頭の老王が差し出す贈り物の真上に、天の星が描かれている。マタイの叙述の中で、学者たちを導いた星であり、この「東方で見た星が先立って進み、ついに幼子のいる場所の上に止まった」(マタイ2・9)のである。星が現れている天は、紺色の濃淡で描かれており、これは神の次元であることを表す、実はその色がマリアの衣の色ともつながっている。イエスが神からの存在であることを、マリアが天(神の次元)の色と同じ衣で包まれていることで暗に示しているのではないだろうか。もちろん、イエスをも、またこの空間のすべてをも満たすような金色も鮮やかである。「あなたの上には主が輝き出で、主の栄光があなたの上に現れる」(第1朗読のことば。イザヤ60・2)の預言が最大限に考慮されているのだろう。

 きょうの福音箇所をさらに深めるために

黄金
 昔はほとんどの国で太陽が最高の神でした。日本でも、天照大神(あまてらすおおみかみ)がいらっしゃいます。太陽と黄金は、深い関わりがあります。燦然(さんぜん)と輝きを放つと同時に、さびもせず、朽ちもしませんので、どこの国でも金は神の色とされました。
 仏教では金色が不死の色とされていて、仏像は金銅(こんどう)で作られるか、もしくは木彫でも金彩色をほどこしていました。
 同じ意味で、聖書でも金は神の尊さを表す色とされています。

ミシェル・クリスチャン 著『聖書のシンボル』「34 東方の博士たちの贈物」本文より

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