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聖書と典礼

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『聖書と典礼』表紙絵解説 (『聖書と典礼』編集長 石井祥裕)
2020年10月25日  年間第30主日  A年(緑)  
あなたの神である主を愛しなさい。隣人を自分のように愛しなさい(福音朗読主題句 マタイ22・37-39より)

天球に座すキリスト 
モザイク 
ラヴェンナ サン・ヴィターレ教会 6世紀

 きょうの福音朗読箇所マタイ22章34-40節は、内容はよく知られている。イエスが神への愛と隣人愛をもっとも重要な掟として告げる場面である。しかも、直接の教えとしてイエスが語るのではなく、旧約聖書の引用として告げるところに妙味がある。「……あなたの神である主を愛しなさい」は申命記6章5節、「隣人を自分のように愛しなさい」はレビ記19章18節からである。すなわち律法の中に示されていた愛の掟が、今、イエスによってはっきりと見紛うことなく明らかにされたということになる。
 このような教え方はファリサイ派に対して、そしてユダヤ人一般に対し、その説得力は計り知れないものがあったであろう。律法の意図を含みつつ、その正しい道を新しい力で示す、自らのことばが神のことばそのものであるというイエスの姿がここで示されることになる。これは、弟子たちにとっても(ひいては現代の我々にとっても)旧約の律法の精神をとらえていくための大きな導きである。そのようなイエスの姿を黙想するために、天球に座すキリストの姿を描くモザイクを観賞資料として表紙絵に掲げている。
 ラヴェンナのサン・ヴィターレ教会は、6世紀半ばの547年に完成し献堂された聖堂である。八角形の建物として知られ、祭壇域の天井モザイクが表紙に掲げたものである。真ん中にいるのがイエス・キリストで、後年から現在に至るまで定着した髭を生やした壮年の姿のキリストとは違った青年像である。彼が座しているのは、鮮やかな青が目立つ球体で宇宙万物を象徴する。そこに座するキリストは、創造主としての権威をもって描かれている。
 主君に仕える家来のように二天使が描かれているが、イエスが右手で冠を差し出している先(向かって左側)に描かれるのは聖ヴィタリス(ウィタリス)で、この教会の保護の聖人である。ヴィタリス(ウィタリス)とは 305年頃、ローマ皇帝ディオクレティアヌスの迫害のもとで殉教した人物である。向かって右端に描かれているのは、この教会を起工した司教エクレシウス。この聖堂を献げるという姿勢で描かれている。キリスト、二天使、この教会の由来に関わる殉教聖人と司教のこれら五者の下は、緑色の野原で花々が咲き乱れ、命の川が流れている(黙示録22・1参照)。これは黙示録の描く新しいエルサレムの光景、すなわち、救いの完成の暁に実現する楽園の光景である。
 こうして見ると、このキリストを描くモザイクは、創造から救いの完成まで(聖書でいえば創世記から黙示録まで)の救いの歴史の全体を踏まえていることがわかる。その中で地上の生涯を死と復活で成就して、永遠の命の主となられたキリストを仰ぎ、そのキリストをあかししつつ殉教した聖人が記念されている。信仰者が生きている次元がこうして輝かしく描き出されている。
 神への愛と隣人への愛をもっとも重要な掟として示す教えを、主であるイエス・キリストのことばとして、宇宙万物、世の始まりから終末までの大きな展望のもとで受けとめていくために、我々の黙想の視野をこのモザイクは広げていくのではないだろうか。隣人への愛は、まずは社会の中で弱者へのまなざしをもつことを促してくれる。第一朗読の出エジプト記22章20-26節が語る、寄留者(今日的にいえば世界中の難民や移住者たち)、そして寡婦や孤児(今日的に広げていえば、身寄りのない人、家族の問題で家を出ざるをえない子どもたち、独居高齢者たち、家を失った人たちなど)、高利貸しに追われる人々など、社会の問題に目が向けられるが、さらに、現代では、地球環境の問題も含めて、全世界的に人間の生きる環境、社会構造の問題にまで目を向ける必要がある。神を愛することは、創造主であり、最終的に人類を解放しようとしている方を思い、そのみ心に沿って生きることを意味することになる。
 核や原発の問題、貧困問題、そして環境問題、そして感染症の全世界的広がりという事態に直面している今年の我々である。教皇フランシスコの回勅『ラオダート・シ ともに暮らす家を大切に』の公布 5周年を記念した年において、イエスが明らかにした「愛の掟」のもつ意味合いの大きさ、その広がり、深さを考えていくことにしたい。このモザイクの中のイエスが座す青い天球のうちに、我々一人ひとりが神から受けたいのちの美しさを味わいながら、そして、それに対して誠実に生きるために何が求められているかを考えながら。

 きょうの福音箇所をさらに深めるために

第6章 いのちの電話の現場から
 この本はこころを病む人とともに生きる教会のあり方についての本ですが、「いのちの電話」はこころを病む人に限定していません。誰でも、いつでも、どこからでも、孤独な人、苦しんでいる人はかけてきてくださいと呼びかけていますので、その内容は当然、年代、性別、環境を超えて、ありとあらゆる話題でかかってきます。
 このような多様なかけ手と一対一でかかわり、素人集団のボランティアであることが、いのちの電話のもっとも大きな特徴だと思います。

英 隆一朗・井貫正彦 編『こころを病む人と生きる教会』「第6章 いのちの電話の現場から」本文より

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