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聖書と典礼

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『聖書と典礼』表紙絵解説 (『聖書と典礼』編集長 石井祥裕)
2020年11月22日  王であるキリスト  A年(白)  
人の子はその栄光の座に着く。そして、すべての国の民をより分ける(福音朗読主題句 マタイ25・31-32より)

最後の審判    
イコン   
バチカン美術館 11世紀

 きょうの福音朗読箇所は、マタイ25章31-46節、長いイエスの説教である。その冒頭(31節)は、「人の子は、栄光に輝いて天使たちを皆従えて来るとき、その栄光の座に着く」とあり、すべての国の民をより分けるという、いわゆる最後の審判についての教えである。
 この説教では、父である神に「祝福された人たち」(34節)が「羊」にたとえられ(33節参照)、「呪われた者ども」(41節)が「山羊」にたとえられる(33節参照)。ここから、実際にこの審判の光景に羊と山羊を描いて、そのイメージを伝える絵もあるが、表紙絵のイコンは、かなり克明に、4層からなる構図で、最後の審判の意味を描き出している。
 その表現にあたっては、最後の審判に言及する新約聖書の他の箇所にも目を配らなくてはならない。たとえば、ヨハネ3章17-21 節にある「神が御子を世に遣わされたのは、世を裁くためではなく、御子によって世が救われるためである」(17節)、ヨハネ5章28-29 節(「時が来ると、墓の中にいる者は皆、人の子の声を聞き、善を行った者は復活して命を受けるために、悪を行った者は復活して裁きを受けるために出て来るのだ」)、そして黙示録20章11-15節の「幾つかの書物が開かれたが、もう一つの書物も開かれた。それは命の書である。死者たちは、これらの書物に書かれていることに基づき、彼らの行いに応じて裁かれた」(12節)などである。
 このイコンでは、まず最上段に天の玉座におられるキリストがいる。セラフィム(イザヤ6・2-3参照)と天使が両側で仕えている。左手に永遠の支配権を示す杖、右手にもっている円盤には文字が書かれている。2段目には、最後の審判者としてのキリストが中央にいる。前にある机には人々の生涯の総決算を示す内容が届けられているのだろう。黙示録が言及する「命の書」が想定される。最上段の下の黒い部分に文字が書かれている。その文言は、ちょうどマタイ25章34節の内容にあたる。「さあ(わたしの父に)祝福された者たち、天地創造の時からお前たちのために用意されている(たまものである)国を受け継ぎなさい」である。
 キリストの右手の側にいるのが祝福の天使、左手の側にいるのが呪いの天使だといわれている。その両脇には各6人ずつ人がおり使徒と思われるが、必ずしも十二使徒ではないともいう。キリストの左手側の先頭にいる白髪で白いあごひげを生やす人物はペトロであり、左手に鍵を持っている。キリストの右手側の先頭にいるのは禿げ上がった額からわかるようにパウロである。ペトロを除いてほとんどの人が巻物を握っているのは、彼らが福音宣教に尽くした使徒や使徒に準ずる人々であることを意味するためだと思われる。人数の12はここでは神に従う人々、神の民を表す象徴的な意味が強いと考えられる。
 そして、3段目には、真ん中に信仰の教えに従順だった人々、向かって左側には、裸で十字架を担いでいる人、それに連なる人々の群れ、向かって右側にはきょうの福音で読まれるさまざまな善行の中から、のどが渇いていた人に水を飲ませる人、牢にいる人を訪ねる人、裸の人に服を着せている人がいる(マタイ25・35、36参照)。すべて、祝福にあずかる人々の姿である(その段の下の文字は小さすぎてわからないが、おそらくマタイのこの箇所の文言であろう)。
 最下段では、向かって右側に、天使たちが墓の中にいる死者をラッパで呼び招くところが描かれている。最後の時に、死の眠りから起こされて墓から出てくるという最後の裁きに関する表象は、ヨハネ福音書や黙示録をもとにしている。ただ、真ん中には子どもを手に抱え、キリストに向かって差し出す女たちや魚や動物たちも見える。創世記と黙示録を踏まえての表象と思われるが、必ずしもはっきりしない。付記されている文言のも残念ながら読み取れない。
 きょうの福音との関連でいえば、上の三つの段の絵の意図がさしあたり重要である。善行を施している相手(渇いている人、牢にいる人、裸の人)のうちに実際にキリストを見るべきであるとのきょうの教えを思い起こすと、このように具象化するイコンは、イエス自身のことばが呼びかける行動を身近に考えさせたであろう。終末の裁きを意識させ、ふだんの生き方を整えていくべきであることを呼びかける意味は大きい。裁きはだれもが逃れたい恐ろしいことを強烈にイメージさせて、注意する、戒めるというよりも、このイコンは、キリストに従うこと、神のみ旨にかなう生き方への具体的な招きであり、励ましになっているのではないかと思われる。

 きょうの福音箇所をさらに深めるために

47 山羊
 聖書に出てくる山羊の毛は黒い色でしたので、彼らのテントも黒い色をしてました。雨が降ると、テントの毛は防水の役をするそうです。神殿の至聖所の前にあった幕も山羊の毛で作られていました。


ミシェル・クリスチャン 著『聖書のシンボル50』「47 山羊」本文より

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