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聖書と典礼

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『聖書と典礼』表紙絵解説 (『聖書と典礼』編集長・日本カトリック神学院教授 石井祥裕)
2026年5月31日 三位一体の主日 A年 (白)
栄光は父と子と聖霊に。神は今あり、かつてあり、また来られるかた(アレルヤ唱より)

御父と十字架のキリスト  
ウルヘルのミサ典礼書挿絵 
スペイン バルセロナ中央図書館 14世紀末

 聖霊降臨の主日の翌週日曜日にあたる三位一体の主日は、唯一の神(実体)が父と子と聖霊という三つの位格(ペルソナ)を有しているという、キリスト教の神の神秘を主題とする祭日である。その趣旨は、この日の集会祈願「聖なる父よ、あなたは、みことばと聖霊を世に遣わし、神のいのちの神秘を示してくださいました。唯一の神を礼拝するわたしたちが、三位の栄光をたたえることができますように」、および(『聖書と典礼』8ページ上段にも掲載されている)叙唱の中心部分「あなたは御ひとり子と聖霊とともに唯一の神、唯一の主。わたしたちは父と子と聖霊の栄光を等しくたたえ、三位一体の神を信じ、礼拝します」に示されている通りである。
 このような式文の言い回しは抽象的で、難しく響くが、ミサの聖書朗読の本文を見ると、神の民の歴史を導いてきた神のあり方を解き明かす教えであることがよく伝わってくる。表紙絵に掲げられた、14世紀末のミサ典礼書の挿絵に描かれたこの図が三位一体の神秘に独特なかたちでアプローチしている作品であることを、聖書朗読を念頭に置きつつ味わっていきたい。
 この絵は上下二段で描かれているが、アーモンド型の光背に包まれているのは御父である神であると思われる。キリストと解することもできるが、キリストの場合は左手に巻物や書物を抱えている図が基本であるのに対して、ここでは左手に抱えられているのは、宇宙全体を意味する球体が描かれている。「天地の創造主、全能の父である神を信じます」(使徒信条の文言)と宣言される御父を描くものと考えることで、この絵の二段の構成は三位一体の神秘と関連づけて味わうことができる。
 上段の御父を囲んでいるのが四福音記者の四つの有翼の象徴で、右上から人のかたち(マタイ)、右下ライオン(マルコ)、左下牛(ルカ)、左上鷲(ヨハネ)である。その下にはキリストの十字架での磔刑が描かれている。脇腹から血が流れ出ているというリアルな描写がこの時代らしい。そして、十字架磔刑図の定型としてマリア(向かって左側)と使徒ヨハネ(右側)がいる。マリアは十字架のイエスを仰ぎ、しっかりとこの出来事を思い巡らしている表情。使徒ヨハネは畏れおののいているのか、十字架に身体を背けている。
 このような磔刑図とともに、きょうの三位一体の主日A年の福音朗読箇所ヨハネ福音書3章16-18節について考えてみよう。「神は、その独り子をお与えになったほどに、世を愛された。独り子を信じる者が一人も滅びないで、永遠の命を得るためである」(16節)。御子の派遣とは、ヨハネ福音書1章で、「言(ことば)は肉となって、わたしたちの間に宿られた」(ヨハネ1・14)と述べられている受肉のことが言い表されている。その目的は、まさしく信じる者が永遠の命を得ることである。
 このことが究極的に実現されたのは十字架の出来事である。御父が御子を世に遣わした、その地上での生涯の極みがまさしく十字架の出来事であり、この絵は、磔刑図のキリストの姿をもって御父の「愛」が実現されたことを描き出している。四福音書の象徴は、福音書全体がその事実をあかししていることのしるしである。
 御父の愛ゆえの御子の派遣という観点で父と子の関係が語られているが、神が“愛の神”であることは、旧約の信仰から変わらずに受け継がれている。それを示すのが第一朗読箇所出エジプト記34章4b-6、8-9節で、ここでは主の御名が宣言されている。「主、主、憐れみ深く恵みに富む神、忍耐強く、慈しみとまことに満ち〔た者〕」(出エジプト34・6)と。この場合の「御名」とは、ある存在の表面に付けられた記号のようなものではなく、その存在そのものの特徴を言い表すものである。宣言の内容は、まさしく神のあり方の啓示である。
 この神のことを、第二朗読箇所の二コリント13章11-13 節では「愛と平和の神」(11節)と呼ばれている。そして、出エジプト記34章6節の「恵みに富む神」「慈しみとまことに満ち〔た者〕」という意味合いは、二コリント書の結びのあいさつにあたる「主イエス・キリストの恵み、神の愛、聖霊の交わりが、あなたがた一同と共にあるように」(二コリント13・13)」の中に流れ込み、その究極に達していると言える。三位一体の神とは、愛といつくしみの神にほかならない。
 この神がいつもミサの中におられる。洗礼・堅信を受けたキリスト者の存在自体は三位の神の交わりのうちにあり、そのことは神と教会共同体との交わりそのものである感謝の祭儀(ミサ)によって、いつも豊かに体現される。我々はこのような神に賛美をささげ、その愛の中で神の民としての分かち合いと交わりを続け、さらに多くの人をこの交わりに招くようにと、派遣される。このようなキリスト者の毎日、特に主日は、常に三位一体の祝日である。ミサが「父と子と聖霊の御名によって」と告げられて始まり、「全能の神、父と子と聖霊の祝福が皆さんの上にありますように」という祝福で締めくくられることのうちに、そのことがまさしく示されている。
 きょうの福音箇所をさらに深めるために

和田幹男 著『主日の聖書を読む(A年)●典礼暦に沿って』三位一体の主日

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