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聖書と典礼

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『聖書と典礼』表紙絵解説 (『聖書と典礼』編集長・日本カトリック神学院教授 石井祥裕)
2026年6月14日 年間第11主日 A年 (緑)
イエスは十二人の弟子を呼び寄せ、汚れた霊に対する権能をお授けになった(マタイ10・1より)

使徒たちを祝福するキリスト
ヴェネツィア サン・マルコ大聖堂 14世紀半ば

 ヴェネツィアのサン・マルコ大聖堂にある洗礼堂の天蓋、ちょうど中央の洗礼盤の真上に描かれるモザイクによるキリスト像である。この円形の周囲に(表紙絵では部分的にしか見えないが)使徒たちの姿がぐるりと描かれている。復活したキリストが主としての権能をもって、使徒たちを派遣するときの祝福を描き出すものである。
 左手にもつ巻物に書かれている文字は、マルコ福音書による復活したイエスによる弟子たちの派遣の箇所16章14-18節の中の「全世界に行って、すべての造られたものに福音を宣べ伝えなさい。信じて洗礼を受ける者は救われるが、信じない者は滅びの宣告を受ける」(15-16節)の部分である。
 この箇所は、「主の昇天 A年」に読まれるマタイ福音書における復活したイエスによる弟子たちの派遣(マタイ28・16-20)との並行箇所にある。二つを合わせて読みながら、きょうの福音朗読箇所マタイ9章36節~10・8節における12人の弟子たちの選びと派遣の箇所を味わっていくことにしよう。
 ここに至るマタイ福音書の構成を振り返っておきたい。マタイ4章では、イエスの宣教の開始(12-17節)、最初の弟子たちの召命(18-22)に続き、病人をいやす活動(23-25)が述べられていた。続く5章~7章は、全体としで天の国(神の国)についてのイエスの教えのことばが続く。8章、9章では、病の人をいやす数々の行いが記される(8・1-17、28-34、9・1-8、18-35)。これらを受けて要約する文章が、きょうの福音朗読箇所直前の箇所9章35節「イエスは町や村を残らず回って、会堂で教え、御国の福音を宣べ伝え、ありとあらゆる病気や患いをいやされた」という文である。
 このイエス自身の教えと行いを模範とし、その力にあやかって継続し展開する使命が、今、十二人の弟子に与えられる。「イエスは十二人の弟子を呼び寄せ、汚れた霊に対する権能をお授けになった。汚れた霊を追い出し、あらゆる病気や患いをいやすためであった」(マタイ10・1)。10章7-8節はもっと細かく「行って、『天の国は近づいた』と宣べ伝えなさい。病人をいやし、死者を生き返らせ、重い皮膚病を患っている人を清くし、悪霊を追い払いなさい」としている。
 これらすべてイエスの活動と同じであり、そのことが命じられているが、果たして彼らにはそのための力(権能)が与えられるのだろうか。ヒントは「ただで受けたのだから、ただで与えなさい」(10・8)というということばである。それらをなしとげる力はただ神からしかこない。神から受けるものを人に与えるようにというメッセージである。ここに、使徒たちの使命の根拠と原動力が見事に語られている。直接には「イエスが権能をお授けになった」(10・1参照)ことが絶対に重要である。神が導き、実現してくれるのでなければありえないはずのもの、それがイエスによって授けられるということに、イエスが神の子であるという神秘が含蓄されていることになる。
 この権能の授与は、究極的にはイエスの復活によって初めて現実化する。マタイ福音書の最終場面で、イエスが十一人の弟子たちに「近寄って来て言われた」(マタイ28・18)ことの意味合いは、10章1節のイエスが「弟子を呼び寄せ」て、言われたことと、復活したイエスが「近寄って来て」言ったことの対応のうちに深い関連性がある。「わたしは天と地の一切の権能を授かっている。だから、あなたがたは行って、すべての民をわたしの弟子としなさい。彼らに父と子と聖霊の名によって洗礼を授け、あなたがたに命じておいたことをすべて守るように教えなさい。わたしは世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる」(28・18-20)。実際、使徒たちが、ことばによる教えとともに、病の人、体の不自由な人、汚れた霊にとりつかれた人へのいやしを実行していくことは使徒言行録が証言している(使徒言行録3・1-10; 4・12-16;8・7;9・32-34など)。
 復活したイエスの「すべての民をわたしの弟子としなさい」(28・19)のことばは、とくにきょうの第一朗読箇所である出エジプト記19章2-6節との対比を通して一層重要になる。旧約の民が主の声に聞き従い、その契約の守るなら、「あなたたちはすべての民の間にあって、わたしの宝となる。世界はすべてわたしのものである。あなたたちは、わたしにとって祭司の王国、聖なる国民となる」(出エジプト19・5-6)と告げられていた。マタイ福音書における弟子たちの派遣では、イエスはすべての民が「わたしの弟子」つまりキリストを信じる者、すなわち新しい契約の民となるようにすることが使徒たちに命じられている。表紙絵のキリストが広げるマルコ福音書による派遣のことばに寄せれば、このことがまさしく福音宣教の使命である。我々のミサにおける派遣は、この使徒たちの選びと派遣を継続するものにほかならない。
 きょうの福音箇所をさらに深めるために

和田幹男 著『主日の聖書を読む(A年)●典礼暦に沿って』年間第11主日

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