みなさま、主のご降誕おめでとうございます。 私はかれこれ二十年近く、インドで活動している修道女です。インドと一口に言っても西と東、北と南では全く違う文化・風習があり、その多様性こそインドの魅力。大多数はヒンズー教徒ですが、イスラム教、キリスト教、仏教などに帰依する人々や土着信仰をもつ人々が共存してきました。 インドでのクリスマス。一番の思い出は、数年前、ヒンズー教徒の村にある私たちの家で迎えた夜のこと。この地では普段、「宣教活動」は一切しないのですが、唯一クリスマスには村人たちを招いて喜びを分かち合います。深く静かな夜に捧げたシンプルなミサ。牛舎から時折啼(な)き声が聞こえます。マリアが出産した晩もこんな感じだったのかも知れません。 ミサの後、子どもたちは手作りのクリスマススイーツを好きなだけ頬張って大満足。イエスさまのご降誕を、宗教という枠を超えて共に祝い、心が豊かになる想いでした。しかしそのイメージは今、世界のあちらこちらを彷徨(さまよ)わなくてはならない難民、とりわけ女性と幼な子に重なります。 宗教の自由が保証されているはずのインドでも、近年マイノリティーであるクリスチャンへの迫害が激化しています。とあるカトリックの村で、クリスマスの夜にヒンズー原理主義者が教会を焼き尽くし、多くの犠牲者が出たのは記憶に新しいこと。またある所では、クリスマスキャロルを歌っているところを襲撃される事件が起き、挙げ句の果てに警察は、事件を起こした無法者ではなく襲われたクリスチャンを逮捕。このような悲惨で理不尽な出来事は枚挙にいとまがありません。 宗教や文化の違いからくる不寛容、蔓延する暴力と差別。イエスさまはまさにそんな社会の中に、神の愛の証しとしてお生まれになりました。身ごもったマリアの声にエリサベトのお腹の子が喜び踊ったのは、イエスさまがマリアのうちにおられたからです。きょう、私たちが一人ひとりの心の中にお迎えしたイエスさま。何を問いかけておられるのでしょうか。 (『聖書と典礼』2019年12月25日号より) 『聖書と典礼』主の降誕(夜半)(2019年12月25日)表紙絵解説 『いのち綾なす―インド北東部への旅』(Weaving of Spirit: A Journey into North East India) 延江 由美子 編著 |