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聖書と典礼

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『聖書と典礼』表紙絵解説 (『聖書と典礼』編集長 石井祥裕)
2024年7月7日 年間第14主日 B年 (緑)  
霊がわたしの中に入り、わたしを自分の足で立たせた (エゼキエル2・2より)

預言者エゼキエル
ステンドグラス 
パリ サント・シャペル教会  13世紀


  きょうの表紙には、第一朗読箇所エゼキエル書2章2-5節にちなみ、エゼキエルの召命の場面を描くステンドグラスの図が掲げられている。エゼキエルの召命は、この書1章~第3章で述べられる。この書の特色として、「わたし」というエゼキエルの一人称で、主の栄光の現れを見た様子(1・4-28)が語られ、2章の初めで、彼は主の声を聞く。「彼はわたしに言われた。『人の子よ、自分の足で立て。わたしはあなたに命じる』」と。このことばは、今回の朗読箇所の最後の2章5節で終わらずに8節まで続く。8節の末尾では「口を開いて、わたしが与えるものを食べなさい」となっており、それに対してエゼキエルは「わたしが見ていると、手がわたしに差し伸べられており、その手に巻物があるではないか」(9節)と語る。結局、主はこの巻物をエゼキエルに食べさせ(3・1-3参照)て、彼を預言者とするのである。
 ステンドグラスのエゼキエルには、右上の白い部分から手が差し伸べられ、巻物が差し出されてエゼキエルの口に向けられている。この2章初めから3章初めまでの一連の内容がここに集約されて描かれている。「人の子よ、わたしはあなたを、イスラエルの人々、わたしに逆らった反逆の民に遣わす」(2・3)に始まるエゼキエル召命と派遣のことばは、巻物を食べさせたあと、再び3章4節から11節まで続く。その中でも「イエスラルの家は、あなたに聞こうとしない」(3・7)と、主に対する民の不従順が告げられる。2章のことばの中で、イスラエルの民は「反逆の民」と繰り返し呼ばれるのとそれは同じである。エゼキエル書の時代背景であるバビロン捕囚という出来事は、神に対する民の不従順にあった、という見方が根底にあり、エゼキエルが預言者として召されたのはこの民に回心を呼びかけるためであったのである。このような主のことばにおいて、また、同時に預言者エゼキエルの苦難も予告されている。
 このような預言者の使命、宿命において、エゼキエルはイエスの姿を前もって示す存在として教会では受け止められている。それゆえに、きょうの福音朗読箇所マルコ6章1-6節で、故郷に帰ったイエスに対する周囲の様子を見て、「預言者が敬われないのは、自分の故郷、親戚や家族の間だけである」(マルコ6・4)と語るイエスの姿の背景に、我々はエゼキエルを見つめるのである。
 さて、ステンドグラスでは、エゼキエルの前には不思議なものが描かれている。上下に四者いるが、興味深いのはそれぞれ四つの顔が重ねて描かれていることである。これは、エゼキエル書1章で語られる主の栄光の現れに同版している四つの生き物である。「彼らは人間のようなものであった。それぞれが四つの顔を持ち、四つの翼を持っていた」(エゼキエル1・5-6)。その四つの顔は、人間、獅子、牛、鷲の顔である(1・10参照)。
 この生き物の姿は、後に新約聖書の黙示録4章に出てくる天上の玉座を囲む四つの生き物とも似ている。その場合、それぞれが獅子、牛、人間、鷲のようであり(黙示録4・7参照)、それぞれが六つの翼があるとされる(同4・8参照)。ここには、イザヤの召命が語られるイザヤ書に出てくる六つの翼を持つセラフィム(イザヤ6・2参照)のイメージも取り込まれている。イザヤでは、そのときのセラフィムの賛美が「聖なる、聖なる、聖なる万軍の主。主の栄光は、地をすべて覆う」(イザヤ6・3)で、黙示録では「聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな、全能者である神、主。かつておられ、今おられ、やがて来られる方」(黙示録4・8)である。いうまでもなく、我々のミサの感謝の賛歌(サンクトゥス)のもとになっている賛美句である。
 預言者を遣わす主なる神の姿は絶えず、そうした不思議な存在によって常に賛美が向けられている存在である。我々が今、新しい式文で「聖なる、聖なる、聖なる神、すべてを治める神なる主」と歌って賛美するとき、イザヤやエゼキエルの召命、黙示録における天上の礼拝を思うのがふさわしく、また味わい深いものとなろう。我々は絶えず主日ごとに主のみ前に呼ばれ、そこから、再び派遣されていくのである。

 きょうの福音箇所をさらに深めるために

和田幹男 著『主日の聖書を読む(B年)●典礼暦に沿って』年間第14主日

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