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聖書と典礼

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『聖書と典礼』表紙絵解説 (『聖書と典礼』編集長 石井祥裕)
2025年1月5日 主の公現 (白)  
主の栄光はあなたの上に輝く (第一朗読主題句 イザヤ60・1より)

三王礼拝 
エグベルト朗読福音書 
ドイツ トリーア市立図書館 980年頃

 主の公現の祭日は、東方の占星術の学者たちが幼子を礼拝した出来事を記念する。きょうの福音朗読箇所マタイ2章1-12節で述べられる内容である。この幼子礼拝を通してすべての人を救う神の子の栄光の現れが確実に示されたという意味で、この祝いは「現れ」(ギリシア語でエピファネイア、ラテン語でエピファニア。日本語はすべての人のための現れという意味で「公現」と訳される)の祝いとなる。
 キリスト教の歴史の中で、このとき礼拝に来た学者たちは、三つの贈り物にちなんで3人、さらに学者ではなく王と考えられるようになる。第一朗読のイザヤ書の言葉「国々はあなたを照らす光に向かい、王たちは射し出でるその輝きに向かって歩む」(イザヤ60・3)は、預言においては未来における救いへの待望ないし確約の言葉であったが、今や救い主イエスをあかしする言葉となっている。これが、学者たちの礼拝の旅路を王たちの行動として味わう一つのもとともなったのだろう。学者たちは、いつしか異邦人の王たちと考えられるようになり、また三つの贈り物(黄金・乳香・没薬)の数から彼らは3人と考えられるようになる。そのため、キリスト教美術では「三王礼拝」が一般的な画題となる。この三人の名前としては、バルタザール、メルキオール、カスパーが伝統となる。
 空に浮かんでいるような三人の王は、これらの三人の王のその前の出来事をあたかも回想するかのように描いている。ベツレヘムに救い主が誕生したことを告げる星が大きく描かれている。つまりこの出来事に関するマタイの叙述の過去が背景に、そして、幼子のところにたどり着いたという今の出来事が前に描かれている。時間経過を一つの画面の中に描くというところに、この時代の描き方の特徴が出ている。
 絵の中の幼子イエスの姿はどうだろう。マタイを読むと、生まれて間もなくして訪問を受けているので新生児であるという印象がある。しかし、ここでは、マリアの身体をいわば座として幼子イエスはすでに少年のような大きさである。ここにも既に救い主の誕生であることの意味合いが含まれているのだろう。
 さて、幼子イエスにおいて神の栄光が万人に向かって現れたという、この出来事の意味がこの絵においても、とりわけ星と聖母子の姿をもって輝かしく表されている。マリアとイエスの頭の光輪が金色であることに示されている。きょうの第1朗読箇所(イザヤ書60・1-6)が、闇が支配する地に主の栄光が現れることを、光のイメージをもって力強く語るところが連想されよう。また、その末尾には、主に供える品物として黄金、乳香が言及されている。マタイでは、「黄金、乳香、没薬」(マタイ2・11)という具体的な品に関しては、教父たちによって、乳香は神への献げ物に使われることからキリストの神性に、没薬は埋葬に使われたことからキリストの死すなわちその人間性に、そして黄金は王への贈り物として王としてのキリストに関連づけられてきた歴史もある。いずれにしても、救いの実現に対する旧約の約束と新約におけるその成就がぴたりと符合している。そこに、まさに第2朗読でいわれる神の「秘められた計画」(エフェソ3・3)の啓示がある。
 公現の福音朗読と絵画を合わせて鑑賞する上で、重要になるのは、学者たちが「家に入ってみると、幼子は母マリアと共におられた」(マタイ2・11)という一節である。マタイ福音書にとって「共におられる」がこの福音書全体を貫く重要なキーワードであることがよく指摘される。イエスの誕生の予告の中で「その名はインマヌエルと呼ばれる」という預言が引用され、この名が「神は我々と共におられる」という意味であると解説されている(1・23)。また、末尾では、復活したイエスが弟子たちに「わたしは世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる」(28・20)と告げる。このように、マタイはイエスを「我々と共におられる方」とあかししているが、そのイエスがこの東方の学者たちの礼拝の場面では「マリアと共におられた」のである。
 神に選ばれ、救い主が生まれ、育つ座として、その生涯の同伴者として選ばれたマリアが救いの恵みを受けた人類すなわち、神の召命を受けた「教会の典型、もっとも輝かしい模範」(『教会憲章』53)であるとすれば、この幼子のうちに「諸民族の光」(同1)である救い主の現れを悟った、異邦人の学者たち(王たち)は、救われるべきすべての民の象徴である。このようにして、神の救いの恵みが我々人類とともにある、という神秘(救いの計画)の深さと広がりを示す三王礼拝である。

 きょうの福音箇所をさらに深めるために

和田幹男 著『主日の聖書を読む(C年)●典礼暦に沿って』主の公現

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