2025年5月25日 復活節第6主日 C年 (白) ![]() |
![]() 星空の十字架 天井モザイク イタリア ラヴェンナ ガラ・プラキディア 5世紀 ラヴェンナの教会建築は古代のモザイク芸術の宝庫として知られるが、その中の一つ「ガラ・プラキディア」として知られる廟堂の中の天井モザイクを表紙絵に掲げた。ガラ・プラキディアとは5世紀前半に生涯を送った(450年没)女性で、キリスト教をローマ帝国の国教にしたことで有名なテオドシウス一世の娘である。ゲルマン民族の侵入の時代、西ゴート王アラリック1世がローマを略奪したときに、捕虜として連れ去られ、同王の後継者アタウルフ(在位410-15)の妻、つまり西ゴート王妃となって、ローマ帝国と西ゴート王国の友好関係維持に尽力したという。アタウルフの死後は、帰国が赦され、417年、後に西ローマ皇帝となるコンスタンティウス3世と再婚、夫の死後は、遺児ヴァレンティニアス3世の摂政(在職425-38)を務めた。この時代の波瀾を象徴する人物である。 彼女の廟堂のドームの天井は、紺色の天を金色の星で散りばめ、その中央に十字架が描かれている。この、ある意味で極めて象徴的な空間イメージを、きょうの福音朗読箇所ヨハネ14章23-29節の内容に重ね合わせて鑑賞してみよう。 この箇所には、先週の解説でも取り上げた「わたしは、平和をあなたがたに残し、わたしの平和を与える」(ヨハネ14・27)という重要なイエスのことばがあるが、ことばの典礼としての福音朗読主題句は「聖霊が、わたしが話したことをことごとく思い起こさせてくださる」となっており、14章26節の要約である。聖霊の働きについての予告が、ここの主題となっていて、これからだんだんと聖霊降臨の主日に至る流れになっていく。 ヨハネ14章25-26節において、イエスが聖霊について教えていることは「弁護者」であるということである。弁護士を連想させるこの日本語はやや難しいが、原語のギリシア語「パラクレートス」とは、「そばに呼ばれた者」という意味である。つまりその次のイエスのことば「すなわち、父がわたしの名によってお遣わしになる聖霊」(25節)が、まさしく説明することである。聖霊とは、イエスの弟子たちのそばにいるように、御父によって遣わされた存在であり、弟子たちに「すべてのことを教え」、イエスが「話したことをことごとく思い起こさせてくださる」(26節参照)のである。 このイエスのことばは、「すべて」「ことごとく」と全体的な言い方をしているので、聖霊の働きの普遍性を語っている。それは広い意味では、イエスを信じて従う信仰者すべてに対して、イエスのことばを思い起こさせ、その意味を考えさせ、悟らせる働きである。そうした信仰者にまさしく「寄り添って」いる存在である、信仰の心や知性を育む存在である。すべての人の心の中には信仰への傾きや求め、芽生えがあるので、そこには聖霊の働きがあると言えるので、聖霊の働きは、まさしく普遍的で万人に及ぶものと言える。そうした働きは、表紙絵のモザイクにおける十字架と星の関係を創り出す紺色の天によって表現されていると考えると味わい深い。十字架と無数の星は、キリストと弟子たち、キリストと信者たちをイメージするにふさわしい。 そして重要なのは、この範囲の四隅に描かれている福音記者のシンボルである。左上=人(マタイ)、右上=牛(ルカ)、右下=ライオン(マルコ)、左下=鷲(ヨハネ)である。四福音書は、まさしくイエスの生涯、教えと行いを我々に思い起こさせるものである。教会はこれらの福音書を霊感によって書かれたものと考えている。聖霊がイエスのことばや行い、その生涯のすべてについての伝承を生み、伝え、それらを霊感に見たらされた福音書の著者たちがすべての人に伝えられるべきものとしてまとめ、今に至るまで教会の書となっている。その営み全体においてまさしく聖霊が働いている。その営みのゆえに我々はキリストを知り、宣言し、賛美し、祈ることができる。救いの歴史とその頂点であるキリストについて、我々はいつまでも黙想に導かれよう。 |